美談で終わらせずポスターのクオリティにこだわる
鹿児島ではポスター展にインスパイアされたフリーのデザイナーたちがODK(おしかけデザインかごしま)というチームを作った。勝手に地域におしかけてデザインの力で地域をよりよくするという主旨だ。
第1回は2013年5月日置郡吹上地区にて12名が12枚のポスターを制作、第2回は鹿屋市にて28店舗のポスターを制作、第3回はさつま町温泉ポスター展を開催。第1回はぼくが少しアドバイスしたものの、もういい意味でぼくの入る隙間がないほどに鹿児島は独自に進んでいる。
松山では愛媛大学と松山ビジネスカレッジクリエイティブ校の生徒が「三津の町ポスター展」を開催した。学生たちが大阪まで来てポスター展を開催した商店街を三カ所見学するほどに熱心であった。他、大阪市立大学が地元商店街で、船橋の商店街では商店主自らがポスターを1人で制作、千葉県松戸市では商工会議所たちの若手メンバーたちが音頭をとって開催、メトロ神戸、奈良の下御門商店街、新潟の古町商店街などと広がっている。
お金がなくとも制約さえなければ日本全国どこでもおもしろいものがつくれるということをこのポスター展は明らかにした。よりおもしろいものを作りたい、より世の中のためになることをしたいというクリエイター・学生のニーズと、地域を元気にしたいという自治体・地域のニーズがうまくマッチしたのだ。それが地方に広がっている理由なのであろう。
とはいえぼくに了解があるものと、勝手にパクられているもの(哀しいかな)など様々だ。本当に各地に広がっていってうれしい反面、これ、大丈夫?と思うポスター展もある。きっちりとポスターのクオリティと掲出方法を管理しなければポスター展は成功しない。ただの自己満足のポスターが陳列されるだけのものとなってしまうのだ。なので、必ず一声かけていただきたい。
最後に地方での広報について。それぞれのポスター展のほとんどは地元メディアが取り上げている。地元のテレビ局からすれば、社会性が高く、かつポスターの内容がおもしろいので、格好のネタになる。さらには女川のように地元のメディアと組めばさらなる大きな展開となる。
しかし、ポスターがおもしろくなければ、メディアへの広がりはない。ただボランティアでポスターを作ったという美談で終わってしまうのだ。なので、ポスターのクオリティはとても大事なのである。そのあたりのことは次回にまた話すとして今回はここで筆を置く。
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日下慶太(くさか・けいた)
コピーライター・写真家・セルフ祭顧問
1976年大阪生まれ、大阪在住。2001年電通入社。コピーライターとして勤務する傍ら、写真家、執筆家、大阪一のアホ祭り「セルフ祭」の顧問として活動。佐治敬三賞、TCC最高新人賞ほか受賞多数。写真家として愚かな日常を綴った人気ブログ「隙ある風景」連載中。
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