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主役はクリエイターから商店主へ。伊丹西台ポスター展の舞台裏 by 電通関西支社 日下慶太

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大阪の新世界市場に始まり、文の里商店街、伊丹西台、そして宮城県女川へと広がっていった「商店街ポスター展」。月刊『広報会議』では2015年3月号から全5回にわたり、仕掛人である日下慶太さん(電通関西支社)によるコラムを掲載してきました。アドタイでは、『広報会議』本誌では掲載できなかった部分など含め、改めて加筆した完全版として全5回にわたりお届けします(隔週予定)

第2回「文の里商店街」の回はこちら

「ポスターで、商店街の売上を伸ばせるか?」という課題

今回は3回目のポスター展、伊丹西台ポスター展を取り上げる。兵庫県伊丹市の西台地区というのは阪急伊丹駅の西側に位置するエリアで、2014年11月1日から2015年3月1日までの開催。

昔は伊丹の中心地であった西台は阪神大震災で壊滅的な被害を受けた。

さらに、JR福知山線の複線化によりJRから大阪へのアクセスが格段に良くなり町の中心が阪急伊丹駅から800メートルほどのJR伊丹駅の方へシフトしていった。西台はかつての面影もなく住宅地といくつかの店舗が混在する静かな町になりつつある。

かつての盛り上がりを取り戻したい、そう思った商店主たちが電通にオファーをした。今までのポスター展と違うところは、大きく5つある。

1)先方からのオファー

過去2回はこちらからポスター展をもちかけたが今回は先方から依頼があった。

2)商店街ではない

「商店街ポスター展」とは名乗っていたが、実は今回は商店街ではないのである。伊丹西台地区という300メートル四方のエリアなのである。

3)商店主のやる気が半端ない

伊丹西台の商店主たちはだいたいが30〜40代と若く、やる気と行動力に満ちあふれていた。これが伊丹での開催理由として最も大きな要因となった。また後で詳しく述べる。

4)自治体のバックアップ

過去、商工会議所のバックアップはあったものの自治体のバックアップはなかった。商店街という線でのみ地域が盛り上がったが、面として、町全体としては盛り上がり切れなかった。

今回は、伊丹市が全面的にバックアップ。市の施設を貸してくれたり、広報に手を尽くしてくれたりと伊丹市全体で盛り上げることができた。

5)阪神大震災

2015年1月17日がちょうど震災から20年であった。震災からの復興というところには物語があった。つまり、メディアもストーリーを描きやすい点である。

以上のことから伊丹での開催となった。数々のオファーがあった。その中で伊丹を選んだ理由は特に3つめの商店主のやる気だ。というのも文の里の反省があったからである。文の里はメディアに取り上げられたこともあってかなりの来客があった。しかし、その来客を活かした店とそうでない店との差が激しかった。

テレビの密着取材が開始前からあり、メディアにしっかりと取り上げられることは分かっていた。人もそれなりに来る。なのでセールをしませんかと呼びかけたのだが応じた店が52店舗中5店舗ほど、店とポスターが相乗効果を起こせば集客はそのまま売上につながるのにと思っていただけに複雑な気持ちであった。

「ポスター展は来客にはつながっているかもしれないが、売上にはつながっていないではないか」という批判もいくつかあった。

自身が身をもって感じたことだが、ポスターによって人を呼ぶことはできても売上は伸ばすことはできない。そこから先は店の自助努力が必要になる。せっかくポスター展で盛り上がった気運をきちんとつかみ、自走できるかどうかも大事だ。電通はポスター展をして終了だ。ずっと商店街の面倒をみることはできない。きちんと自走できる商店主と組む必要があった。その点、伊丹はすばらしかった。

次ページ 「会議は深夜2時まで 商店主の自助努力こそ重要」へ続く