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コラム

CSR視点で広報を考える

親会社経営陣関与の不祥事に信頼回復の一手はあるのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(10)

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第10話の見所:複数の不祥事の危機対策は優先順位の決定が重要!

「リスクの神様」では、系列企業や取引先での不祥事が続く中、親会社の社長や専務の不正行為が発覚、危機的事態は時系列の中で重なり合うように発生していく。危機管理コンサルタントは、会社を救うため、個々の危機の拡散がどのように影響を与えるかを冷静に分析、仮想シナリオをイメージして、落としどころを模索するヘリコプタービュー(俯瞰分析眼)の特殊能力が必要となる。

当然ながら、経営者、危機管理コンサルタント、各ステークホルダーのそれぞれの視点から危機レベルを捉えることも必要だが、むしろどこにも視点を置かず、客観的に全体を俯瞰し、どこから玉が飛んできても回避または抑制できる対策を検討することが危機対策を行う者には不可欠だ。そのためには全容を把握する、危機レベルを判断する、危機的事態の進行スピードを予測する、などが重要管理点であり、最も予測しておくべきことは、予想を超えた事態が生じることを前提として織り込んでおくことだ。

爆弾が破裂(内部告発など)して一発で死に体になることや、二の矢、三の矢が放たれて徐々に追いつめられる事態も含めて、あらゆる状況を想定しておくことも危機対策の基本中の基本と言えるだろう。

その意味で情報の発信だけでなく、情報の統制・管理も危機対策の重要な役割だ。発信のタイミングを決めたら、その前に情報が漏出してしまえば危機対策は失敗に終わる。情報の出方は、内外合わせてもかなり複雑な流出経路が見込まれ、どこで爆弾が破裂するかわからない。そのときの状況がリスクテイクできないと思われるほど危険水域に入っていれば、選択肢は前述のケースのように「直ちに公表」をとるしかない。西行寺が、この局面において「ご理解ください。あなたのとるべき選択肢はひとつです!」と経営者に詰め寄るシーンは、まさにこの判断を行った瞬間だった。

直近に起こった不祥事だけでなく、30年前に起こした軍事独裁国家との契約そして国際協定違反という真相についても、西行寺が公表を迫ったのは決して父親の復讐のためではない。経営者にとって、「隠せるものは隠す」という理論が少しでも働けば、その会社の未来は限りなく危ういものになるからだ。

サンライズ物産顧問の天童が西行寺をサンライズ物産に呼んだのは、彼にサンライズ物産の危機を救わせ、西行寺自身についても父親が関与した30年前の事件という呪縛から解き放つためでもあった。

西行寺から多くを学んだかおりは、「危機に陥った以上、すべてを守ることはできません」「危機こそチャンスです」と最終話でも語っている。白川新社長は社長職を解かれ、坂手顧問が再び社長へ一時的に復帰するも、危機対策はまだ終わらない。最後のシーンで危機対策室のボードには、さりげなく「会見後は役員総辞職」「新社長はメインバンクから招聘」と貼られている。最後の最後まで後始末を怠らないことも危機対策の基本だ。