全国数多くの自治体でもシビックプライドを掲げた取り組みが見られる中で、『シビックプライド2【国内編】—都市と市民のかかわりをデザインする』が発売となりました。海外事例を集めた『シビックプライド—都市のコミュニケーションをデザインする』の続編です。今回は、プランナー田井中慎氏に聞きました。
地域のことを考える時、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本、人と人のつながり)に着目することは重要だ。地域全体に豊かな人間関係が拡がっていることが、そのまちを良い方向に進める原動力になるのは間違いないだろう。
ソーシャル・キャピタルは必ずしも直接的な人の関係性のみを指すものではない。『シビックプライド2』では、都市を構成するモノやコトを介した人と人のネットワークのあり方を、2部ネットワークを用いて解説している。
最近はSNSの発達もあり、以前は見えづらかったコンテンツを介した間接的なコミュニティのつながりも可視化しやすくなっている。
では人と都市の関係はどうみればよいだろうか。ここでは人と都市のインタラクション(interaction、相互行為)として考えてみたい。
インタラクションは「双方向の」という意味でよく使われるインタラクティブの名詞形だが「人間とシステム間のインタラクション(情報のやりとり)」といった使われ方をする。コミュニケーションという言葉がフィットしづらいヒトとヒト以外の間に生成されるつながりを表すことが多いようだ。
人と都市のインタラクションにおいて、都市はメディアの力を借りることで人の前に立ち現れる。そのインタラクションを媒介する端的な物は例えば地図や街頭の標識。地図や標識を見ることで人は自分がその都市にいることを実感できる。
そのような物は他には都市のロゴや特徴的な風景等もそうだろう。シビックプライド研究会ではそういった人と都市をつなぐメディアをコミュニケーションポイントと呼んでいる。
『シビックプライド2』の中では特にコミュニケーションポイントが集積するコーディネーションセンターをシビックプライドセンターと名付けた。
イメージに近いのは空港の管制室だろう。その瞬間、空港の端々で起きている事象が一望出来る管制室は、対象を都市に置き換えればシビックプライドセンターになるだろう。
シビックプライドセンターに模型を置くことを推奨する理由もここにあって、ひと目で自分のまちが一望できることで市民と都市のインタラクションが強く働く。良質なシビックプライドセンターがデザインできれば、そこは都市の中で磁場の強い場所になるのだ。
観光開発やコミュニティ活性では、人と人の触れ合いである「おもてなし」にばかり注意を奪われがちだ。シビックプライド醸成は人のつながりだけではなく、都市とのインタラクションにも目線を向けたい。
『シビックプライド2』で提示したデザインは人と人、市民と都市、両面を複合的に考えるコミュニケーションデザインである。
田井中慎(たいなか・しん)
1970年生まれ。プランナー/プロジェクト・デザイン。広告会社勤務の後、2008 年に4CYCLEを設立。広告コミュニケーションの立案・制作のほか、商品開発、地域ブランディングまで幅広くコミュニケーションデザインの業務を行っている。4CYCLE が携わる主な事業として農水省が推進する「Food Communication Project」、カンボジアにおける自然資源の利活用推進を行う「エリシルク・プロジェクト」、観光圏整備事業「雪国観光圏」のブランディング事業など。
「都市を未来へと動かす「シビックプライド」」バックナンバー
- ガーデン・シティからシティ・イン・ア・ガーデンへ、シンガポールのシビックプライド(後編)(2016/5/11)
- ガーデン・シティからシティ・イン・ア・ガーデンへ、シンガポールのシビックプライド(前編)(2016/5/10)
- フォントで東京のアイデンティティを伝える(2016/2/01)
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- シビックプライドとシティプロモーション(2015/12/09)
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