カスタマージャーニーよ、さらば。

いやぁ、こんなバナー、お客さんクリックすると思う? え、クリックが目的じゃない? じゃあ何なのよ。ブランド認知? このバナーで認知をとって、後から検索させる? そうしたら検索広告はどうなってんの? これの承認もらえたら考える? あのさぁ、まずカスタマージャーニーを描こうよ。全体のシナリオがないと個々のパートの是非は判断できないじゃない–。

そんなクライアント、あるいはボスの一言から、カスタマージャーニーをめぐる我々の旅はスタートします。しかし、その旅は幻の白鯨「モビー・ディック」を巡るピークォド号の死の航海のごとしです。喧々諤々の議論の末、ジャーニーはどうにかでき上がるわけですが、何となくみんなしっくりきません。スターバック一等航海士(余談ですがスタバの語源)は航路に不安を覚えています。銛打ちのクイークエグは食料を心配しています。そしてしまいには、狂気のエイハブ船長がこんなことを言い出します。

“It is not down on any map; true places never are!(それは地図などには載っていない。真実の場所はいつだって!)”

Pe3k / Shutterstock.com

カスタマージャーニーは、ターゲット顧客に対して、1.どんなタイミングで、2.どんなタッチポイントで、3.どんな態度変容を起こすのか、をデザインするものですが、細かく見ていけば通常一つのタッチポイントが複数の役割(態度変容)を担っているものです。

木を見る視点(個別最適)ではなく、森を見る視点(全体最適)なので、関係者全員が100%しっくり来るものは、そもそも期待する由もないのかもしれません。ジャーニー自体の効果測定ができない、キャンペーンがうまくいった(失敗した)として、それがジャーニーのおかげ(せい)なのかどうかが判然としない、といったことも、そんな“しっくりこない感”を助長します。

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井上 大輔(OFFICE pianonoki マーケター)
井上 大輔(OFFICE pianonoki マーケター)

OFFICE pianonoki マーケター。
ヤフー 、ニュージーランド航空、ユニリーバでデジタルマーケティングの責任者を歴任し現職。advertimesコラムニスト。
ツイッター:@pianonoki
著書に「デジタルマーケティングの実務ガイド」

井上 大輔(OFFICE pianonoki マーケター)

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