企業がファンを軸にクチコミや評判を広げる仕組みづくりである「アンバサダープログラム」。これまでのマーケティングとどう違い、どんな可能性を持っているのか、企業の担当者や識者へのインタビューで、そのメカニズムを明らかにしていきます。今回は、アジャイルメディア・ネットワークの藤崎実氏が、多摩美術大学教授の佐藤達郎さんに世界の潮流とアンバサダーが注目される背景についてお聞きしました。
今回のゲスト
佐藤達郎(さとう たつろう)。ADKから博報堂メディアパートナーズを経て、多摩美術大学教授。近著『「これからの広告」の教科書』(かんき出版)
なぜアンバサダーに注目が集まるのか
藤崎:
本題に入る前に、なぜ「アンバサダー」が注目されるようになったのか、世の中の流れからお聞きします。佐藤さんは、以前に「Talkability(トーカビリティ)」というテーマの論文を発表されていましたよね。
佐藤:
はい、ある時から広告に話題性を重視した表現が増えてきたので、その傾向を“話題になる力”という意味の「トーカビリティ」という切り口で分析しました。トーカビリティという言葉は、英語圏では大変よく使われます。
その当時、アメリカではトーカビリティだけでなく、「アドボケイツ」の活性化についても議論されていました。トーカビリティを分析した経験があったので、アドボケイツにも注目し、日本広告学会で紹介したのです。
藤崎:
それは、人に話しやすい広告表現、いわゆる「バズる広告」に注目が集まっていた。その同じ文脈で、話題にしてくれる人たちである「アドボケイツ」にも注目する流れが生まれてきたということでしょうか。
佐藤:
そうですね。今までの広告は企業からユーザーに直接語りかける方法が中心でしたが、ユーザー同士で語ってくれる傾向がより強まってきた。そういう環境では、話題にしてくれる人である「アドボケイツ」にも着目する必要があります。僕は、そういった話題にしてくれる人を生む表現を「ソーシャル・クリエイティビティ」と呼んでいます。
