【前回】「広告主視点で語る、「コンサル会社の広告界への参入」が日本で意味すること」はこちら
「ブランド」も「景観」も資産である
ブランドガイドラインをめぐり、「神学論争」をしたことはありませんか?いわく、このロゴのまわりの余白は「先進的」ではない。いわく、このモデルの前髪は「挑戦」というブランド価値に反する。そうした議論は感情的にヒートアップすることも少なくなく、ガイドラインの番人はほんの些細なチャレンジに対して、まるで全人格を否定されたかのように過剰反応します。
ブランドは企業の一資産であるはずですが、不動産や知的財産などのように事務的に管理されることはなく、本邦では時にまるで宗教的な偶像のように扱われます。その結果、ブランドをポートフォリオで管理したり売買したり、という発想から経営者やブランドマーケターが遠ざかることになり、逆にブランドマーケティングの発展が阻害されていると考えます。少なくとも、グローバルスタンダードからは外れていきます。このことを理解するためには、文化的な背景を深堀する必要があります。
20世紀最大の知の巨人、といっても過言ではない文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースは、親日家という言葉では言い尽くせないほど深く日本文化を愛していました。ブリュッセルで生まれパリで育ったフランス人の彼は、少年時代、画家であった父からプレゼントされた広重の浮世絵版画と恋に落ち、爾来学校で良い成績を取った際は、ご褒美に国芳や北斎をおねだりするようになりました。それだけでは飽き足らず、小遣いを貯めては東洋美術を商う雑貨屋に日本の骨董品を買い求め、部屋を小さな日本に飾り立てては悦に入っていたといいます。