コラム

『編集会議』の裏側

“小さな取次”が起こす、本の売り方を変えるイノベーション

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本を売るプロが、本を売るだけで食べていけるように

──「ことりつぎ」は、既存の流通に、どのようなイノベーションを起こすのでしょうか?

流通自体は難しい問題ではありません。ある程度の市場規模がある業界であれば、すでに流通網はできあがっているはずなんですよ。たとえば美容室だったらシャンプーを卸している流通のラインがすでにある。その流通網に本をのせることも、実はできると思っています。もっといえば、コストさえ見合えば宅配便でも良い。

本屋の数は減っていますが、出版点数は増えていて“たくさん送って、たくさん返す”というのが当たり前になっています。あまり考えたくないことですが、そしてこの予想が外れると良いなと思うのですが、僕はそのうち出版点数が減るときが来ると思っていて、そうなったときに、既存の大規模流通網を維持できなくなることを最も恐れています。だから、大規模流通と小規模流通を、そろそろ両立させておかないといけないのではないかと考えているんです。

大規模流通に特化して、効率を極めているのが現状です。いざ大規模流通がなくなったときに、どうするのかという問いに対して、誰も答えを持ち合わせていない。商流と物流を兼ねている取次が弱体化してしまうほど、出版の業界としても危機は高まります。取次5番手の太洋社が自主廃業を決めて、本屋が閉店するということも起こってしまっているわけですから。

出版がどうこうというわけではなく、新規参入ができない産業は弱っていくと思っています。美容師は5~6年経験を積めば独立できますが、それを書店員がやろうとするのはかなり難しい。取次に払う保証金もあるし、粗利が低いから運転資金が厳しくなる。最初の仕入れにもすごくお金がかかるんですよね。ナショナルチェーンが増える以外に、新たな勢力が増えようのない構造になっていることが、現状の大きな問題点です。

だからこそ、本屋でイベントをしてお客さんを集めるのはマネタイズとしては正しいと思います。でも、本を売るのが好きな書店員は、イベントを企画したり運営したりすることに向いていない人もいますよね。ただただ本に向き合うのが好きな人も多いですし。本が好きで本を売るプロフェッショナルになった書店員が、本を売るだけで食べていけるようになるためにも、粗利率の高い小規模流通を増やしていきたいと思っています。

僕がやろうとしていることは、もしかしたら10年くらいかかるかもしれません。でも、いま「ことりつぎ」では実験店舗というものをやっていまして、可能性を広げようとしています。

「本の市場は“出版業界の外”にある、カギはどれだけ巻き込む人を増やせるか」など、続きは、『編集会議』2016年春号をご覧ください(本記事は2016年2月に取材したものです)。

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