運転手に気をつかう乗客。
まず、そもそもタクシーの車内で運転手と会話するのかを聞いてみたところ、ほとんどの人が頻繁に会話をするし、特にそれを嫌がっているわけではないようでした。
一方、これは大きな気付きだったのですが、ほとんどの人は「運転手に対して自分から話しかけない」と言うのです。
たしかに自分の体験を思い返してみても、「今日は天気悪いですね〜」と話しかけられてから会話が続くことはあっても、自分から話しかけることってほとんど記憶にないです。
次に、「ゆっくり丁寧に走ってほしい」と思った時、運転手に対してそれを伝えるかを聞きました。それに対する回答の一部をご紹介します。
ほとんどの乗客の方は、ゆっくり走って欲しいと運転手に対して言えない、という結果でした。
「タクシーの運転手は基本的に態度が悪いというイメージ」
「言ったところで治らないと思っている」
といった運転手に対する期待値の低さはある意味想像通りでしたが、
「運転手さんの走りを否定することになるから我慢してしまう」
「不快な思いをするぐらいなら自分が我慢すればよいと思う」
といった運転手への気遣いのコメントがここまで多かったのは想定外でした。
そして、その中でも印象的だったのが以下の意見です。
「急いでくれるのは気遣った行為だと思うのでそれを否定はしづらい」
日本っていうのはなんて思いやりのある国なんだ!
という感想はさておき、私が感じていた「運転手に言えない理由」はまさしくこれだったことに気付かされました。
タクシーを利用する人はきっと急いでいるだろうからなるべく早く目的地に届けることが使命である、と運転手が考えているとすれば、それは自らのリスク(制限速度オーバーによる交通違反など)を犯してまで乗客のことを思ってくれたんだと乗客が考えた結果、運転手に対して意見ができない、というのは何とも日本人らしいですが納得感のある話だと思います。
一方で、はたして運転手は本当に乗客のことを気遣っていたのか、はやや疑問ですよね。気遣って急いでいるのではなくて、早く次の客を乗せるために急いでいるだけなんじゃないか、とか邪推してしまいます。
これもやはり運転手に直接お話を伺ってみるしかないということで、実際にインタビューしてみました。
その結果、タクシーの乗車体験における日本ならではの課題が明確に浮かび上がってきたので、その話は次回にお話します。
ところで、私が書いているこのコラムのタイトルは「共感デザイニング」ですが、ここまでの内容だと「?」って感じだと思います。
ですが、今回のコラムで紹介した調査や仮説検証こそが、この後に「共感をデザイン」する上での最重要ポイントになっていきます。
ということで、次回以降もお楽しみに。
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