【前回】「「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリー「バーチャル・リアリティで、未来の人間は何を得るのか?」」はこちら
「eスポーツ」とは、エレクトロニック・スポーツの略。個人やチームで行われるコンピューターゲームの対戦競技のことで、海外ではサッカーや野球を観戦するように、多くのファンが上級者のプレーに熱狂しています。近年では、賞金総額が22億円を超える大会が開催され、テレビ中継も行われるなどポピュラーな存在になり、その波は日本にも押し寄せつつあります。今回のデザイントークは、デジタルゲーム研究の第一人者で東京大学大学院元教授の馬場章さん、プロゲーミングチーム「デトネーションゲーミング」代表の梅崎伸幸さん、eスポーツ分野を扱う弁護士の藥師神豪祐さん、人気格闘技ゲーム「鉄拳」世界王者でプロゲーマーの中山大地さんをお迎えし、進行を日本eスポーツ協会の筧誠一郎さんが担当します。世界でスポーツマーケティングの一角を占め始めたeスポーツの現況と未来像を前・後編の2回にわたってお伝えします。
「eスポーツ」の規模はとてつもなく大きい
筧:
「エレクトロニック・スポーツ」(eスポーツ)に私が出合った10年前、その存在は世の中でほとんど知られていませんでした。私はこのeスポーツを普及させるために6年前に電通を退職し、専門の協会や会社をつくってきたのですが、ようやく最近になって、さまざまな場で話題に上るようになってきました。
日本では「スポーツ」といえば、体育や運動をイメージしますが、海外では「競技」や「楽しむ」という意味合いが強く、チェスやビリヤードもスポーツの範囲に入ります。ですから、コンピューター上で行われる対戦型の競技が、eスポーツということになります。ドラゴンクエストのように1人でプレーするゲームはeスポーツには入りません。
いま世界で最も流行しているeスポーツは、チームを組んで相手の陣地を攻め落とすタイプのゲームです。中にはプレーヤー人口が7500万人にもおよぶゲームもあります。これはサッカーや野球も含めた全スポーツ種目の中で4番目または5番目の競技人口になり、世界のeスポーツのプレーヤーは推定で1億人以上いるともいわれています。
最近は、人気サッカーゲーム「FIFA」がJリーグのマーケティング権を購入したり、プロサッカーチームの「マンチェスター・ユナイテッド」がeスポーツのチームを買収しようとしたり、ということも起きています。教育面では、スウェーデンやノルウエーの公立高校でeスポーツが授業に採用されています。

