磯部光毅×寄藤文平「戦略プランナーとアートディレクターによる“戦略史”トーク」

【前回コラム】「森永乳業 寺田文明×磯部光毅「広告主の課題意識は、広告戦略からコミュニケーション戦略へ」」はこちら

コミュニケーション戦略を7つに整理し体系化して解説する『手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』(宣伝会議刊)。著者で戦略プランナーの磯部光毅氏と、同書の装丁を担当したアートディレクターの寄藤文平氏が、B&Bでトークショーを行った。テーマは「コミュニケーション戦略の70年史、俯瞰したら何が見えてくる?」。アカウントプランニングのプロとデザインのプロによる、“コミュニケーション戦略史”をめぐる対話をダイジェストでお届けする。

砂漠の真ん中で水を売るのに適した戦略は?

右)寄藤 文平 氏

寄藤:

今回、装丁を担当させていただいたんですけれども、一人の読者として、とても勉強になりました。磯部さんはコミュニケーション戦略の発展の歴史を「7層構造のミルフィーユ」に例えて説明されていますよね。ポジショニングから始まって、ブランド、アカウントプランニング、ダイレクト、IMC、エンゲージメント、クチコミと進んでいくプロセスがすごく整理されて感じました。

僕は、最初に原稿を読んだとき「この順番、逆じゃないのかな」と思ったんですよ。普通に生活していたらクチコミが最初ですよね。例えば友人と「ちょっとバンドやろうぜ」という話になったとします。ライブをするからお客さんを呼ばなきゃ、と最初は友達に声をかける。それでも足りないと母ちゃんにもチラシを配ってもらって、しまいには強面のヤンキーが手売りするみたいな。ポジショニングができるようになるのは、相当売れっ子バンドになってからじゃないかと思うんです。それが逆順で進化してきたっていうことが不思議でしたね。

世の中に並存する様々な戦略・手法を、7つの戦略論に分けて整理した「7層構造のミルフィーユ」。年代を追うごとに、理論が複層化し積み重なっている。

磯部:

おっしゃる通りですね。通常のコミュニケーションを考えれば、むしろこのミルフィーユは上下逆さまですよね。クチコミで広めて、エンゲージメントでファンをつくってという順になりますよね。なぜポジショニングが一番はじめにあるかと言えば、マーケティングコミュニケーションの歴史は、マスメディアの発達と同時並行で進んでいるからなんです。ポジショニング論は、1950年代以降まさにテレビを中心としたマスメディアが伝達手段として浸透し、各社の競争が生まれた時代だからこそ、生まれた理論と言えます。

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磯部 光毅
磯部 光毅

アカウントプラナー
1972年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、1997年博報堂入社。ストラテジックプランニング局を経て、制作局(コピーライター)に転属。2007年独立し、磯部光毅事務所設立。主な仕事に、サントリー「JIM BEAM」「ザ・プレミアムモルツ」「伊右衛門」「伊右衛門特茶」、トヨタ自動車「G's」、ダイハツ「タント」、コーセー、KDDI、Google、味の素、AGF、花王、ティファニー、ブリヂストン、三井不動産、カルビーなど。ブランドコミュニケーション戦略を核に、事業戦略、商品開発からエグゼキューション開発まで統合的にプランニングすることを得意とする。受賞歴にニューヨークフェスティバルズAME賞グランプリ、ACC CMフェスティバル ME賞メダリストなど。著書に『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』(共著、宣伝会議、2013年)、『アジアマーケティングをここからはじめよう』(共著、PHP出版、2002年)、『ニッポンの境界線』(共著、ワニブックス、2007年)がある。

磯部 光毅

アカウントプラナー
1972年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、1997年博報堂入社。ストラテジックプランニング局を経て、制作局(コピーライター)に転属。2007年独立し、磯部光毅事務所設立。主な仕事に、サントリー「JIM BEAM」「ザ・プレミアムモルツ」「伊右衛門」「伊右衛門特茶」、トヨタ自動車「G's」、ダイハツ「タント」、コーセー、KDDI、Google、味の素、AGF、花王、ティファニー、ブリヂストン、三井不動産、カルビーなど。ブランドコミュニケーション戦略を核に、事業戦略、商品開発からエグゼキューション開発まで統合的にプランニングすることを得意とする。受賞歴にニューヨークフェスティバルズAME賞グランプリ、ACC CMフェスティバル ME賞メダリストなど。著書に『ブレイクスルー ひらめきはロジックから生まれる』(共著、宣伝会議、2013年)、『アジアマーケティングをここからはじめよう』(共著、PHP出版、2002年)、『ニッポンの境界線』(共著、ワニブックス、2007年)がある。

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