コラム

広告でいちばん面白いのは表現じゃない。戦略だ!

國田圭作×磯部光毅「人間の習性や行動メカニズムを使って人を動かす『行動デザイン』とは?」

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Amazonのダッシュボタンは究極の「行動デザイン」である

國田:逆に質問ですが、磯部くんは、なぜ「7つのマーケティング戦略」ではなく、「7つのコミュニケーション戦略」にしたんです?

磯部:『手書きの戦略論』では、コミュニケーション戦略を、ポジショニング論、ブランド論、アカウントプランニング論、ダイレクト論、IMC論、エンゲージメント論、クチコミ論に分類して、歴史をたどりながら説明しています。よく、「マーケティングじゃないの?」と言われるのですが、意図的に「コミュニケーション」にしています。

マーケティングの4つのP、Price(価格)・Place(流通)・Product(製品)・Promotion(コミュニケーション)の中で、今、圧倒的な革命が起きているのはPlace(流通)です。だって、スマホのボタン一つで物が買えるんですよ。これはとんでもない変化です。マーケティング全体を語ろうとしたら、どうしてもPlaceの変化に多くの紙幅を割かないといけない。ただ今回はまずコミュニケーション戦略について書きたかったので、タイトルも「コミュニケーション戦略」としました。

國田:「プロダクト」と「コミュニケーション」と「マーケティング」の関係についてはどう捉えていますか?

磯部:広告コミュニケーションだけ切り離して考える人は今は少なくて、商品のパッケージやネーミングも含めてコミュニケーション、というのがデフォルトの考え方になっています。『手書きの戦略論』で触れていないところで言うと、國田さんの本の中で出てくる「アクセシビリティ」という概念は流通の話とも通じる、非常に大きな要素ですよね。

顧客への接近競争が起こり、商品の差より、どのくらい距離が近いかで物が選ばれるように変わってきているというお話です。これまで遠くまで買いにいかなければならなかったものが、近くにイオンやセブンイレブンで買えるようになり、さらにスマートフォンを通して買える、というようにどんどん接近していっている。

國田:コミュニケーションでいくら頑張っても、距離には勝てないという状況に来てしまっているんです。アマゾンのダッシュボタンをご存知ですよね。例えば、洗剤のダッシュボタンを冷蔵庫に貼っておいて、ピッと押すと洗剤が届く。これはものすごくインサイトが考えられた仕組みで、洗剤が欲しいと思った瞬間を捉えるわけです。

このポチッと押す感じがリアルなインタラクションだとアマゾンはわかっているんです。アマゾンは究極のデジタルビジネスだと思われていますが、実際には現実世界に深く入り込んで来ているんです。あれは究極のアクセシビリティだと思います。

磯部:ほしいと思ったら押せばいいんですからね。広告を見たその場で買えるものが基本的にダイレクトマーケティングだと考えると、今後すべてのコミュニケーションはダイレクト化する流れだと思います。

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