コラム

広告でいちばん面白いのは表現じゃない。戦略だ!

國田圭作×磯部光毅「人間の習性や行動メカニズムを使って人を動かす『行動デザイン』とは?」

share

すぐ隣にある日常行動に乗っかる「レーン・チェンジ法」とは?

磯部:せっかくなので、國田さんからもっと行動デザインの成功事例を教わりたいです。

國田:朝食をテーマにキャンペーンをした、スープとグラノーラの話をしましょうか。

しばらく前ですが、「パンをひたす派 VS パンをつける派」というようなあるカップスープのキャンペーンがありましたよね。パンをスープにつける派か、ひたす派か、どちらを支持しますか?と聞いたんです。”VS”と言われると、人は思わず「自分はどっち派だろう?」と考えてしまう。その瞬間、ツボにはまってしまうわけです。

フルーツ入りのグラノーラが大ブレークしたきっかけは、ヨーグルトにトッピングする提案をしたことだったと言われています。シリアル自体はあまり食べないけれど、朝食でヨーグルトを食べる女子は多い。そこにフルーツ入りのグラノーラをトッピングすれば、おいしいし、体にもよさそう、という感じで受け入れられました。

スープもグラノーラも、他社よりおいしいとか、厳選された素材を使っていると訴求しても、全部コモディティになる。そんなときに、スープにパンをひたす、ヨーグルトにシリアルをかけるという、すぐ近くにある別の行動を組み合わせて提案すると新しい闘い方になるんですね。パンは毎日食べるけれど、スープはそんなに食べるものではないから、毎日食べるものにのっかる。それで、市場がガーンと伸びた。

磯部:それは國田さんが本の中で書いている「レーン・チェンジ法」ですね。レーン・チェンジ法について説明していただけますか。

國田:ハイボールがいい例ですね。ウィスキーの消費が落ちて、どうしようかと考えた時に、ウィスキーのことを考え続けるのはやめて、ウィスキーの横のレーンにあるものは何だろうかと考えた。お酒を飲むシーンをイメージすると、みんなビールや酎ハイを飲んでいる。その時何で飲んでいるか。ジョッキです。だから、ウィスキーをジョッキに入れるという発想が、レーン・チェンジなんですよ。

磯部:すぐ隣にある行動と組み合わせるぐらいが、ちょうどいいんですね。

國田:そうです。うんと離してしまうと、ついてこられない。近いところでないと、人は行動しません。

2017年以降、注目のマーケットは「シニア」と「睡眠」?

磯部:次は、これから伸びしろのある注目のマーケットをズバリお聞きしたいのですが。

國田:やはり高齢化社会は未曾有のマーケットチャンスだと思います。シニアは「何かすることがほしい」と思っている人が多い。しかし、今の仕事のマッチングは若い人向けばかりで、シニア向けのサービスは全くできていません。

磯部:“元気なシニアマーケティング”ですか。

國田:そうですね、元気な人だけでなく、心は元気だけど、体がついてこないシニアもいますからね。彼らをどうアシストするか。家から一歩も出ずに、VRで好きな映像を見まくるという過ごし方もあるかもしれません。それはそれで楽しそうですが、家に閉じこもると市場はどんどん小さくなってしまいます。ビジネスチャンスは人が動くことで生まれます。ですから、シニアを外出させる行動デザインには、大きなチャンスがあると考えています。

例えば、女性は家から出る時にはちゃんとおめかしをしますよね。高齢者も、髪の毛が短いとなかなかお洒落できないけれど、セミロングにしたらヘアスタイルのバリエーションが増えて素敵じゃないですか。それで、セミロングまで髪を伸ばせるシャンプーが、シニアにすごく売れる。出かけるのが楽しくなりますからね。

もうひとつは”睡眠”です。日本人はOECD諸国の中で2番目に睡眠時間が短いそうです。今は子どもがLINEの返信をするために夜ふかしして不眠症になるなど、睡眠に関わるいろんな問題が起きています。PCやスマートフォンのブルーライトやストレスなど、睡眠障害にはいろんな要因があります。さらに睡眠障害は、自殺率や、うつ病や認知症の発症率も高めると考えられています。それがわかっていても、生活習慣を変えるのはなかなか難しい。

また、睡眠のマーケットは、ソリューションとしては大きいけれど、睡眠は非活動時間のマーケティングですから、マーケットがなかなか見えません。そのため、送り手が興味を持たないんです。ここを何とか行動デザインできたら、僕はこの先ずっと、それで食べていけると思っているんですけどね(笑)。

次ページ 「部分的な「最適化」を超えた、全体の「最大化」の地図を描きたい」へ続く

Follow Us