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コラム

コピーライター養成講座 講師・卒業生が語る ある若手広告人の日常

コピーライター 谷山雅計さんに聞く教育論「コピーライターはどう育てるのか?」

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新しくなった宣伝会議賞

今野:今年の宣伝会議賞のイメージキャラクターは『水曜日のカンパネラ』のコムアイさんです。これまでと変わって、アーティスティックな方に変わりましたね。

谷山:僕はここ数年、宣伝会議賞の最終審査員に加えて、応募促進のための広告制作を担当しています。

これまでの宣伝会議賞は、一人で1000本書いてくる常連さんに支えられていたのだけれど、裾野を広げたいということで中高生にも応募してもらう「中高生部門」ができた。そこで、そういう若い人たちに訴求できる人ということで、宣伝会議が出してきた候補の中から、アートディレクターの秋山具義くんと僕とで選んだのです。実際にコムアイさんにお会いしたら、人間的な存在感がある素敵な方でしたよ。

中高生のコピーといえば、僕は高校で広告の授業をしたことがあります。広告に関心があるという10人くらいの生徒のリクエストに高校が応える特別授業でした。

学生は、最初は「コピーなんて誰でも書けるでしょ」くらいに思っていて、じゃあまず10本書いてみようとすると、10本ですらなかなか書けないという壁にぶつかる。でも、その高校生たちは何の先入観もなかったから、「ここをこういう風に変えたら、一つ広告に近づくよ」みたいなことを教えると素直に学習していく。授業は4回したのだけれども、最終的にはそれなりのものができるため、これは大学生や社会人よりも吸収が早いなと思いました。

だから、宣伝会議賞の中高生部門でいきなり広告コピーを書くというのも難しいとは思うけど、「コピーライター養成講座 高校生版」みたいのを受講できたら、大分変わるとは思うけどね。

今野:今までの宣伝会議賞のポスターには、「日本最強の一行は誰だ。」や「グランプリまで、飛んでいけ。」といった賞を獲ることを直接訴求するコピーが書かれていました。今回は、「ジブンだけの言葉。ジブンだけの自由」という、今までとはタイプの異なるコピーです。

谷山:今回のコピーはうちのアシスタントが書いたものなんです。コムアイさんを起用して中高生まで裾野を広げたいという意図があったため、広い意味での言葉のコピーがいいねという方向になっています。

今野:コピーライターや広告業界以外の人が、今後も宣伝会議賞を受賞することはあると思いますか?例えばラッパーや作詞家の人とか。

谷山:ないことはないと思いますよ。逆に広告の勉強をしている人間が別ジャンルに流れるということもあり、僕が昔教えていた生徒のなかには、歌人として頭角を現してきた木下龍也くんもいます。

ただ、コピーライターは言葉を使ってる職業の中では、ある意味、言葉から遠い職業でもある。というのは、表面的な意味での言葉よりも、根底にあるモノの考え方に重要性があるから。そういう意味では建築家の話を聞いていると、考え方に共通することがある。コピーは、建築の設計図ととても似ています。

だから、別ジャンルの流入はあるかもしれないけど、ものすごくたくさん起こることはないかなと思います。むしろコピーライターを辞めて、作詞家になったり、小説家になったりして、成功したという話を聞きます。その人の作詞や小説を読むとすごいのに、コピーライターとしてはそこまでの実績を残してなくて、それはどっか広告的なこととは合わずに、別の仕事の方が合っていたということなんでしょうね。

次ページ 「自分を売ることが、一番難しい」へ続く