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コラム

コピーライター養成講座 講師・卒業生が語る ある若手広告人の日常

コピーライター 谷山雅計さんに聞く教育論「コピーライターはどう育てるのか?」

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自分を売ることが、一番難しい

今野:最後に質問ではないのですが、コピーライター養成講座に通っていて思うことを述べたいと思います。

今まで「お笑い」に広告の知識や考え方を生かすことを考えてこなかったんですが、最近、「自分たちという商品を売るためにはどうしたらいいか」「自分たちの名前が流通するにはどうすればいいのか」をようやく考え始めたのです(このインタビューから2か月後、僕のトリオ名を『ザ・フライ』から『シンブン』に改名しました。最近は、その名前にちなんだ社会派コントを作っています)。だから広告について学んだことを、これからお笑いで、どんどん活用できたらなあと思っています。

谷山:それはとても良かったことだと思うけど、自分を売るのって結構難しいんですよ。僕も他人の商品を売ることに関しては30数年もしてきたから、自信はあるんですけど、こと自分のことになると、どうやって売っていいかすごく難しくて。

だから、最初に出した本のタイトル(『広告コピーってこう書くんだ!読本』)をつける時も悩みまくって、全然良いものが考えられなかった。それでも考えて、結果的にあのタイトルは、そんなに悪いものではなかったと思ってるんだけど。

ただ、周囲からは書籍のタイトルに「広告やコピーを入れると売れませんよ」と言われた。なぜかと言うと「世の中に広告やコピーを作らなければいけない人は、すごい少ないんです」と。でも「企画をしなきゃいけない人や、何かを伝えるために本を参照する人はたくさんいます」と。だから売りたかったら、そういう企画とか伝えるという言葉を入れた方が良いと言われました。確かに最近の本でも、『伝え方が9割』とか『伝わっているか?』とかがある。

ただ、自分は「広告コピー」と絶対に入れたかった。一時的に売れるのでなくて、毎年広告コピーに興味を持った人が、まず一冊読んでみようと思った時に手にとってもらい、それが継続していくってことを狙っていたから。そこで、広告コピーの真ん中のタイトルにするというわがままを言わせてもらって、ああいうタイトルにしました。

そしたら思いの外に、広告コピーを書く人以外にも読んでもらえたから、それは意外だった。でも難しかったよ!

まるで初心者向けの課題のように、自分の広告を作ってみようとか、自分の学校のPRをしてみようとかを簡単だと思って出題する人もいるけど、それって一番難しいことを求めているんだよ。自分を客観視することは難しいからね。

メーカーの中には自社で広告作るところもあるけれど、大概のメーカーが人に広告を頼むのは自分を客観視することが難しいからでしょう。もちろん講座で何か得るものはあると思うけれど、自分を売ることはとても難しい(笑)

今野:頑張ります(笑)

谷山:ぼくは自分という人間を戦略的に広告界に売り出していこうという知恵を考えたことはなくて、常に頼まれたことをやるのみだった。
でも、自己プロデュースせずに55歳になって、これからまだ仕事したいと思っていても、若い人間の方が頼みやすいってのはある。頼む側からすると40~45歳のクリエイティブディレクターが55歳の自分に仕事は結構頼みづらいところがあって、35歳くらいのバリバリやっている方が頼みやすい。

年を重ねて段々頼みづらい人間になっていくときに、「どうやったら頼んでもらえるかな」とか(笑)。ひょっとすると何か考えなきゃいけないのかなあ、と思ったりもするけど、「今さらね~」。バンドや芸人であれば、解散やピンになったり、誰かと組み直したりすると新局面が生まれるけど、ずっと個人でやっているとねえ。

今野:じゃあ、名前変えるとかですかね。

谷山:それもさすがにな~(笑)。

でも、何でこんなに他人のためにばっかり考えて、知恵を出してるのに、自分のためにはできないのか、ある意味謎だね。



インタビューは以上です。谷山さん、色々と答えて頂き、ありがとうございました!
感想はたくさんあるのですが、既に結構長い記事になっているので、世界で僕だけしか気づいていないことを手短に書きます。

ずっと谷山さんの声を聞いて書き起こしをしていると、誰かの声に似ているなーと思いはじめました。記憶をたぐりよせると、ロバート秋山さんと友近さんが予備校の夏季講習をやるコントに辿り着きました。そうです、その時の秋山さんの声に似ていました!

このように僕自身は役に立たない情報しか持ち合わせてないので、読者の皆さんは谷山さんの発言から有益な情報を得て頂ければ幸いです。

さて、次回はこのコラムの最終回です。最後なので、名残惜しく、たくさん書こうと思います!