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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

『逃げ恥』のヒットから考える「広告とはそもそも、心を動かすコンテンツではないか」という話

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ネイティブ広告が新たな役割を担う

P34の「図5」なんですけど、これわかるでしょうか。パーチェスファネルと呼ばれる有名な図です。ここでは「認知」と「検討→購買」の間が黒くなっている。ネット広告における“ミッシングリンク”だと言っています。さっきの論の続きなんです。

ネット広告はファネルのいちばん最後の部分がほとんどだった。「認知」はこれまではマス広告が負っていた。いまだって、なんだかんだ言われながらもテレビCMが一手に背負ってますよね。

ネット広告には、この真ん中の役割がなかった、だからネイティブ広告が必要だ、という論が展開されています。

さて質問です。ネット登場の前は、上の真ん中の部分はどこが担っていたでしょう?いろんな解釈ができますが、マス広告の中でも新聞や雑誌広告が担っていた、という見方はできますよね?実際、新商品発売時にはテレビスポットを何千GRPだか展開し、新聞3紙で15段広告やって、というメディア分担をしてました。新聞広告のボディコピーで、商品特長を丁寧に説明したり。あるいは、雑誌のシリーズ広告でテーマ設定をして商品にまつわるうんちくを語ったりしました。でもいま、言っちゃ悪いけど新聞と雑誌は広告メディアとしては心もとないことになっています。広告コミュニケーションの中で、あまり頼りにされない存在になっている。

だとしたらね、図5の真ん中の部分はやはりネイティブ広告などで補わないといけない。それは、これまで新聞や雑誌でやっていたようなことのはずです。そしてそれは、「あんたターゲットなんだから、この商品ほしいんでしょ」と無神経に表示するもんじゃないはずです。『逃げ恥』にとっての恋ダンス動画のように、独立したコンテンツとして楽しめるのだけど、商品に近づきたくなる、そんな効果を目指さねばならないはず。それにそんな方向性は、これまでの広告制作となんら変わらないんじゃないでしょうか。

何が言いたいかというと、これまでの広告制作の技術や姿勢や感覚を、これからネットで生かす時が来てますよ、ということなんです。『逃げ恥』にとっての「恋ダンス」のような距離感のコンテンツを、コピーライターやアートディレクターやプランナーが、作っていくことが時代の要請なんじゃないかと言いたいのですね。わかってもらえるでしょうか?

ということは、「恋ダンス」が記事を通じて伝わったとか、その記事がソーシャルで拡散されたとか、そういった“仕組み”も参考になると思います。

ところで、私はこのように「ネイティブ広告ハンドブック」にはいろいろ学ばせてもらいました。ネイティブ広告のことがよくわかっただけでなく、広告論の原点のようなところまで大いに啓発されました。その作成に携わった皆さんには心からお礼を言いたい。ありがとうございました。そして、大変な作業、ご苦労さまでした。業界を良くしていこうという皆さんの志、素晴らしいと思います。

いろんなこともあったようですが、まったく気にする必要はないと思います。結局、必要な人には届いて、必要な使われ方をするのですから。そして必要な人はおそらく、あとからあとから出てくるはずです。ネット上に文書を置くことには、そういう価値もあるのだと思います。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer 」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。株式会社エム・データ顧問研究員としても活動中。お問合せや最新情報などはこちら