「アンチ・デザインシンキング」輸入した考え方に踊らされないための方法論 坂井直樹×倉成英俊【前編】

【前回】「コトバがない広告って、つまんなくないですか?福部明浩×小杉幸一×尾上永晃×福里真一【後編】」はこちら

坂井直樹さんは1980年代から、さまざまなヒット商品、そしてデザインを生み出してきたコンセプター。単にうわべだけをデザインするのではなく、商品の哲学、世界観、その全てを戦略的に体系付けて、クライアントも含めたチーム全体をモチベートしてきました。「コンセプト」という言葉をメジャーにした先駆者でもあります。

また、電通の倉成英俊さんがリーダーを務める電通総研 B チームは、私的活動/趣味/大学の専攻/前職などを通じて、一芸に秀でた40人の社員を束ねたシンクタンク。2014 年7月の発足以降、独自のリサーチを通じて開発した新しいコンセプトを 『Forbes』 などで発表し、2年で50以上のプロジェクトをコンサルティングしてきた集団です。

今回、その両者が話すのは「コンセプトを輸入するな! 他人のコンセプトを簡単に引用するな!」というアンチコンセプト流用。つまり「アンチ・デザインシンキング」です。つい陥りがちな、知識先行型のメソッドを解体し、柔らかくアタマをもみほぐすセッションです。

コンセプターとはどんな仕事なのか?

倉成:

皆さんご存じの通り、坂井さんは元祖「コンセプター」という肩書で一世を風靡(ふうび)されました。コンセプトを軸に、どんなふうにお仕事をされてきたか、まずは話していただけますか。

坂井直樹
ウォーターデザイン代表取締役。コンセプター。

京都市立芸術大学入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立し刺青プリントTシャツを販売。帰国後はテキスタイルデザイナーとして活躍後、1987年に日産自動車から販売された「Be-1」のコンセプト企画でヒットを出し、その後は国内外の製品開発に携わる。2008~13年慶應義塾大学SFC教授。ブログ「坂井直樹のデザインの深読み」。

坂井:

最近「何屋さんですか」と聞かれると、「実態はクリエーティブの代理店ではないでしょうか」という言い方をしています。もっと具体的に言うと、大企業のデザインセンターが僕のお客さんで、そこが求めるものは何でもつくりますよ、ということです。しかも、そこが求めるものは時代が移り変わるごとに、どんどん変化していくんですよ。

倉成:

どう変化していくんですか?

坂井:

1980年代から90年代に求められたのは、プロダクトデザインでした。しかし95年にインターネットが一般に登場して、その後にiPhoneがさまざまなハードウエアを吸収してプロダクトの形は求められなくなってしまいました。つまり「もの」の時代が終わったんです。そこで当時は、大学でキャリアエンパワーメントやインサイトの構築法などを教えていました。

最近は、企業に対してクリエーティブなチームをつくるためのアドバイスをする機会が多いです。あとは、僕が面白いと思う人材を企業に紹介する仕事もしています。さらに、デザインリサーチといって、外資系メーカーに日本人のデザイン観をまとめた資料を提供するようなこともありますね。

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