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渋谷区×電通ダイバーシティ・ラボ 異色の基本構想ができるまで

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昨年新たに策定された渋谷区の基本構想。宣言文からはじまる異色の構成、イラスト入りでわかりやすく内容を伝えるハンドブックなど、これまでの自治体にはない“ 伝える”ための工夫が凝らされている。このプロジェクトの発想から実現までのプロセスを、渋谷区長 長谷部健さんと電通ダイバーシティ・ラボ 北本英光さんを中心にしたチームの皆さんに聞いた。

左から、電通 アートディレクター 小野恵央さん、電通コピーライター 魚返洋平さん、渋谷区長 長谷部健さん、電通 ダイバーシティ・ラボ 北本英光さん、電通 コミュニケーション・プランナー 中井桃子さん、電通東日本 営業部 佐竹孝夫さん

「いい提案」を呼び込むための基本構想刷新

渋谷区は昨年10月、20年ぶりに基本構想を刷新した。基本構想とは、20年後を展望した区の未来像を示し、区のあらゆる政策の最上位概念に位置づけられるもの。いわば区の「憲法」のようなものだ。「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を未来像に掲げ、「子育て・教育・生涯学習」や「福祉」など7分野にわたって渋谷区が実現したいビジョンを示している。これまでの自治体の基本構想にはないわかりやすさ、そしてエモーショナルな言葉づかいが目を引く。

渋谷区長の長谷部健さんは「多くの提案が渋谷区に集まるようにしたい、というのが基本構想刷新の一番の目的」と話す。

「渋谷区では、区民や区内の企業はもちろん、区民以外の多様な人、企業、NPOなどと積極的に連携していきたいと考えています。その時、企画を提案する側はここに紐づけて考えればよく、受け取る側はここを基準にして判断をすればよい。基本構想とは、そのような使い方ができるものです。僕自身、広告会社出身で提案をしてきた側ですが、その時はそれがよくわかっていなかった。でも、行政の側に入って初めて、基本構想に紐づいていれば提案を受けやすいのだと気づいたんです。僕らはいい提案がたくさんほしい。だからこそ、新しい基本構想では、自分たちのビジョンをきちんと伝えることに注力したし、またできあがった基本構想を多くの人に知ってもらいたいと考えているんです」。

そのために意識したのは“言葉の力”だ。「頭で知るよりも、エモーショナルな言葉で、感じてもらうものにしたかった。そこに期待して、コミュニケーションが専門である広告会社をパートナーに選び、基本構想を制作しました」。

今回、そのパートナーとなったのは、電通ダイバーシティ・ラボの北本英光さんを中心とするチームだ。

「これまで基本構想を作ったことのある人間は社内におらず、我々にとってもチャレンジでした。ダイバーシティ・ラボの知見も生かしながら、新しいメンバーにも加わってもらい、チームで“基本構想づくり”という新しい仕事に取り組みました」(北本さん)。

基本構想は、区民や有識者が参加する審議会を経て決定される。コピーライターの魚返洋平さんは10回以上行われた審議会に毎回出席し、その要点を抽出し、専門家以外が見てもわかる言葉でまとめていった。

一方で、プロデューサーの役割を担ったコミュニケーション・プランナーの中井桃子さんは、区の8の部局のヒアリングに立ち会い、基本構想の原案となる審議会答申をまとめていった。基本構想の軸になっているのは、長谷部区長が掲げる「ダイバーシティ&インクルージョン」というテーマだ。

全国に先駆けて、いわゆる同性パートナーシップ条例(正式名称「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」)を制定したことにも象徴されるように、渋谷区は人種、性別、年齢などあらゆる多様性(ダイバーシティ)を受容し、その上で多様性をエネルギーへと変えていく(インクルージョン)ことを掲げている。

つまり、渋谷区に集まるすべての人の力を街づくりの原動力にするということだ。その先に、ロンドン、パリ、ニューヨークに並び称されるような成熟した国際都市を目指している。基本構想の冒頭に掲げた「ちがいを ちからに 変える街。」は、このダイバーシティ&インクルージョンを日本語で表したもの。韻を踏むなどのコピーワークを行うことで覚えやすく、流通しやすい言葉にしている。

ニュートラルで公共的な印象を与える言葉とは何か?

基本構想の文章を考える上で、魚返さんは、①行政の言葉=公共の言葉ではない ②一つの統一した人格で語る、の2点に配慮したという。

「行政の慣習に則ると、行政の独特の言葉の使い回しが公共の言葉のような思い込みをしがちですが、そうではない。みんなが普段喋っている言葉にすればいいわけでもない。どのような言葉づかいにすれば、ニュートラルで公共的な印象を与えられるのかを意識しながら書きました。また、1つの文章としてまとめるためには、1つの人格で語るべきだと考えました」。

・・・続きは本誌をご覧ください。

※本記事は『ブレーン』8月号特集に掲載されている記事の一部を編集したものです。

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