共感より反感が多い広告は本末転倒
議論の過程で、個人的に興味深かったのは、ギャツビーの男性向け消臭剤やワコールの女性向け下着といった商品の広告では、どのような内容であっても、視聴者から何らかの批判的なご意見が必ず返ってきてしまうということです。
例えば、男性の臭いを強調する消臭剤の広告を展開すると、「臭いのは男性だけじゃないだろう」という意見がくるようです。すべての人が諸手を挙げて、賛成してくれる広告表現の実現が難しいことを象徴する逸話でしょう。
そこで、マンダムの上森さんが重要だと話されていたのが「共感の可視化」。再生数だけを目標としてしまうと、宮城県の動画のように炎上したことで再生数がどんどん増えても、「成功」と定義されてしまいます。
志布志市も、炎上した動画と、その反省をもとにつくり直した動画では10倍以上も再生回数が違うそうです。再生回数だけを見ると、炎上した動画の方が成功していたように見えてしまいます。
しかし志布志市のブランドイメージという観点から考えれば、炎上した動画が失敗だったことは明白です。つまり再生回数だけを目標に設定してしまうと、本来のネット動画の目的であるはずのブランディングや購入意向の向上とは、かけ離れた結果になってしまうリスクがあるわけです。
そういう意味で、上森さんが指摘していたように、共感のボリュームを何らかの方法で可視化することができれば、結果は違って見えてくるはずです。
本来、企業を好きになってもらうためのネット動画のような広告で、再生数や視聴数を追い求めるあまりに共感よりも反感をたくさんかってしまっているようであれば、それは明らかに広告としての役割を果たせていないはずです。
ネット動画で過激な表現に走って、再生数を追い求める前に、一度企業の「らしさ」の視点と顧客からの共感の視点で、立ち止まって考えてみることが大事なのではないかと感じます。
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