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AIコピーライター「AICO」と働いてみたら、コピーの未来が見えてきた

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人間はもっと、コトバの「常識」から自由になれる?

そもそもの前例がない以上、「人工知能コピーライター」のつくり方からつくり始める、試行錯誤の日々。それは普段、何気なく使っている日本語を、別の角度から改めて見つめる機会でもあった。

例えば、日本人にはおなじみの「すもももももももものうち」という文章も、機械が扱えるようにするためにはまず単語を一つずつ適切に分解していく「形態素解析」という工程が必要だったりする。かと思えば、人間では複雑に感じるようなコトバの意味の足し算・引き算を、機械はサッとやってのけたりする。

こうして我々は狩野教授から人工知能について教わる一方、広告の実務を通じて学んできた「広告コピーの考え方」などを狩野研究所の学生たちに教えたりしながら、プロトタイプ制作を進めていった。

※制作スタッフ:CD+C 福田宏幸、企画+C 堤藤成、AD田中元

その過程で、当初「AIコピーライタープロジェクト」と呼んでいたこのプロジェクトは、「AICOPYWRITER」の略称である「AICO」と呼ばれるようになった。そしてその「アイコ」というチャーミングな響きは次第に、「人間とともに共創するパートナーを目指す愛らしい存在」という意味でも、象徴的なアイコンになっていった。そして結果的に、斜め上すぎる“ヘンテココピー”を提案しても笑って許せてしまえるような、チャーミングな新人AIというキャラクター設定にもつながっていった。

そして実際に「AICO」の初期プロトタイプから生み出された2万個のコピーは、とても刺激的なものだった。

そのほとんどは、文章とも呼べないような意味不明なコトバの羅列だった。だが、そのカオスなコトバの大群を延々と見ていく過程で、とても不思議な感覚に襲われた。それは、「もっとコトバは自由になれるのでは」という感覚。

普段、人間の思考には「常識」というバイアスが存在する。しかし、AIにはそもそも常識という前提がない。実際、「新聞広告クリエーティブコンテスト」(日本新聞協会主催)でファイナリストに選出された「AICO」制作の膨大なコピー群を羅列した「この広告のコトバは、人工知能が書きました」という原稿や、日本で初めてAIが書いたキャッチコピーを使った「新聞広告の日」の新聞広告(フジサンケイビジネスアイ掲載)を見ても、「新聞広告」「セクシー」「待つ」という、およそ常識的にはあまり考えないであろうコトバの組みあわせでできている。

(左)「新聞広告クリエーティブコンテスト」(日本新聞協会主催)でファイナリストに選出された『この広告のコトバは、人工知能が書きました』※制作スタッフ:CD+C 福田宏幸、企画+C 堤藤成、AD+D田頭慎太郎、C+監修+PRG 狩野芳伸・谷口諒輔・島田渉平

(右)「新聞広告の日」の全頁広告(フジサンケイビジネスアイ 2016年10月20日掲載)※制作スタッフ:CD 福田宏幸、C AICO・堤藤成(ボディコピー部分)、AD 森大地、 AP小安雄一・福田岳

このように「AICO」は、常識に頼らず、まさに「機械的」にコトバをつくり出す。紡ぐコトバは粗削りでも、素敵な偶然のセレンディピティで人間の発想を刺激し、人間をコトバから自由にしてくれるブレインストーミングのパートナーになれる可能性がある。

囲碁や将棋でも、AIが登場したことで新たな打ち手が生まれるなど、囲碁・将棋そのものの可能性が広がった。同様に、広告クリエイティブの世界でも、「AICO」をはじめとしたAIやテクノロジーと共に切磋琢磨していく中で、新しい表現が生まれていくのではないだろうか。

次ページ 「そもそもコピーは、たった一人の天才が生み出すものなのか?」へ続く