【前回】「電通×アマナ コラボ企画 「ビジュアルが持つ力の本質とは?」【後編】」はこちら
今回の電通デザイントークのゲストは、世界初のUSBフラッシュメモリーやイオンドライヤーなど、数多くのイノベーティブなコンセプトを生み出したことで知られる世界的ビジネスデザイナーの濱口秀司さんです。聞き手は、2017年10月に電通に新組織として発足した電通ビジネスデザインスクエアの牛久保暖さんになります。多くの企業が様々な環境変化に直面し、新規ビジネス創出や業態転換を迫られる現代において、イノベーションを生み出す「ビジネスデザイン」について考えます。
ビジネスデザインの根幹は「シフト」すること
——今回のデザイントークは、電通の企業理念である「Good Innovation」に、我われが本当に取り組めているのか、イノベーションの第一人者として知られる濱口さんに話を聞いていきたいと思います。
濱口さんと電通は3年前から一緒に仕事に取り組み、昨年は顧問にも就任してもらいました。電通の強みや弱みを理解している濱口さんと話ができることは、とても意義深いと思っています。
濱口:
自分が何者なのか説明するのは難しいですが、最近は「ビジネスデザイナー」と名乗っています。ロットマン・スクール・オブ・マネジメントの元学長であるロジャー・マーティン氏が著書『ビジネスデザイン』を出版したときに、「ビジネスをデザインする人のことを書いた。まさに君のことだ」と本を贈ってくれたためです。
「デザイン」と付いていますが、何か絵を描くわけではありません。僕の仕事の根幹は「シフト」、つまり「ずらす」ことにあると考えています。
仕事はまず、複雑性が高い事象を理解することが求められます。そのときに企業の方向性をシフトさせて、新しい方向を見つけていく。これが、僕のひとつ目の仕事です。
もうひとつ目は、コンセプトやアイデアを「リチューン」することです。いくら面白く新しいアイデアも実現できなければ意味がありません。クライアントの技術力や経済力を踏まえて、実現可能なサイズに調整していくことも仕事です。

