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県庁組織にイノベーションを起こす小さな組織「さがデザイン」

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2017年にグッドデザイン賞を受賞した佐賀県庁の組織「さがデザイン」。佐賀県庁の中と外のクリエイターをつなぐハブとなり、尖ったアイデアを県庁でも実現するミッションを背負った小さな組織だ。小さな組織が、県庁にどのようにイノベーションを起こそうとしているのか。
(本記事は、『地域を変える、アイデアとクリエイティブ! 読本』記事を転載したものです)

県知事の肝いりで登場した特命セクション

「さがデザイン」は、県の施策をデザインの視点で磨き上げるというミッションを背負い、2015年に設置された組織だ。一般的に行政組織は縦割りで、意思決定は現場から上層部へと承認を仰いでいくピラミッド型の組織になっている。その結果、当初は独創的でとがったアイデアも、フィルターを通していくうちに面白みのないもの、ありきたりなものになりがちだ。これは多くの自治体が共通して抱えている課題だろう。

その現状を打破するため、佐賀県の山口祥義知事がトップダウンで指示し設けたのが、特命セクション「さがデザイン」だ。佐賀県で「さがデザイン」を担当する宮原耕史さんは、「行政は、元々法律で決められたことを、正しく執行する役割を負っています。

だから、何か決まりがあることに対して、正しい答えを出していくのが得意です。ただ、最近言われている地域づくりや地方創生には正解がありません。正解がないことに対して答えを出していくということを、職員は訓練されていないんです。そういう組織でクリエイティブなアイデアを通そうとすると、とても時間がかかるし、アイデアも丸められてしまう。そこで、このピラミッドの外に意思決定の機能を置き、尖ったアイデアをそのまま出そうという試みが『さがデザイン』なんです」と話す。

そして、「さがデザイン」は県庁の活動の中にデザインの視点を取り込む試みでもある。「行政組織では、まず内部で職員が企画を立案し、必要に応じ外部の利害関係者のヒアリングを行って事業を形にしていきます。しかし、そのプロセスには、『そもそも』のコンセプトから物ごとを紐解いて考えるデザインの視点が足りないんです。『さがデザイン』の活動は、こうした行政の事業のコンセプトに、広義のデザイン視点を加えることでもあります」と説明する。

とはいえ、「さがデザイン」は設立当時は2 名で始まった組織。自分たちだけで事業を立案したり、実施しているわけではない。

「僕たちは必ず県庁内部の事業担当課と一緒に仕事を進めています。県庁内のジャッジにかけてしまうと通らなそうで困ったぞ、という時が僕らの出番です」。

その時に協業するのが、「さがデザイン」の強力な外部パートナーである、デザイナーなどクリエイターやコンサルタントをはじめとする専門家のネットワークだ。宮原さんは、「さがデザイン」の立ち上げに当たり、佐賀出身のクリエイターを中心に、約半年間、ひらすら人に会って回り、「佐賀のプロジェクトに協力してほしい」と話をしてネットワークを構築していった。その数は現在では約100 人にのぼる。こうした専門家たちが「さがデザイン」を通じて事業立案のアドバイザーになったり、さらには、事業の実施プロジェクトチームの一員として協力している。

つまり、行政の職員が県庁内の事業部門と専門家の間に立って両者とつなぎ、理想的な形での事業の実現をサポートしているということ。行政では例を見ない、珍しい取り組みになっている。

次ページ 「コンセプトから考え直して大変貌を遂げた「県庁CLASS」」へ続く