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地域のクリエイターの強みは「地元のブランドを自分事として知っていること」

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100万社のマーケティング」で連載中の「地域老舗企業発『デザイン思考』経営」では、地域の老舗企業とクリエイターがパートナーとなり、新しい価値を生み出した事例を、手がけたクリエイターが自ら解説しています。今回は、ピースグラフィックスのアートディレクター・平井秀和さんが、名古屋土産の定番「ういろう」をつくる老舗和菓子メーカー・青柳総本家を紹介します。

※本記事は、「100万社のマーケティング」2014年12月号に掲載した内容を転載したものです。

青柳総本家は明治12年創業、135年続く和菓子メーカーです。

名古屋駅構内や東海道新幹線車内などでのお土産としての販売を通じて、「ういろう」が名古屋名物として親しまれるようになるために貢献した会社です。

2008年に初めてお仕事をいただいて以来、商品のパッケージや紙袋など、10件ほど同社の仕事を手がけてきました。

ういろうは棒状のものが主流ですが、お客様からは「切るのがイヤ」「重い」という声があり、さらに夏に売り上げが減るという問題もありました。そこで生まれた商品シリーズが「季節の味くらべ」。切らずに食べることができる、茶巾しぼりの一口サイズで、春夏秋冬で味が変わる限定商品です。

2011年夏、既存商品のリニューアルで「冷やしういろう」が初登場して以来、毎年季節ごとに販売しています。私は同商品のパッケージデザインを担当しました。

オリエンは、「一口サイズの食べやすさに、『冷やして食べる』という新しい価値を加えた商品をつくりたい」というもの。通常、ういろうは冷やすと固くなりますが、これは逆に冷やして食べるということが新しい。その特徴を強調するために、外箱はてぬぐいのような涼しげな和柄をモチーフにデザインし、色は青系で統一しました。

文字や絵柄はかすれた表現にすることで「老舗」の印象を強めました。茶巾しぼりの包材にはフレーバー名を入れず、色のイメージだけで「黒糖味」と「和三盆味」の2種を判別できるようにしています。

食べるときは極力、文字などを見ることなく、味やひんやり感だけに集中してもらいたいと考えたからです。

「和菓子メーカー」ではなく「和菓子さん」-企業イメージもデザインに織り込む

デザインは“思いつき”で考えるのではなく、その企業の向かっていく方向、5年後・10年後の姿に思いを馳せながら制作しています。

例えば青柳総本家の場合は、「メーカー」というよりは、「大きな和菓子屋さん」のようなイメージをパッケージに織り込みたかった。

工場見学に行った際、製造工程に手作業の部分が多いことに気づいたのがきっかけです。いまは手づくりが好まれる時代なので、パッケージからも“手仕事”の雰囲気を感じてもらえるようにできたらと考えました。

広告をあまり打たない企業の場合、企業のブランドイメージをつくり上げるのは商品そのものや店頭。そこでは、パッケージデザインが重要な役割を果たすと考えています。

地元の老舗企業と地元のデザイナーが協業するメリットは、「デザイナー自身が商品について知っていること」だと思います。クライアントからのオリエンだけでなく、そのブランド・商品を自分ごととして知っていることで見えてくる長所や問題点があり、だからこそできる提案があると思います。

平井秀和 Hidekazu Hirai
ピースグラフィックス アートディレクター、グラフィックデザイナー

名古屋市生まれ、名古屋市在住。2002年ピースグラフィックス設立。青柳ういろう、大和屋守口漬総本家など地元の企業のパッケージなどをはじめ広告、書籍、商品デザインまで幅広く活動。2015、2017と日本パッケージ大賞で連続金賞、GOOD DESIGN賞Best100、Pentaward金賞、アジアデザイン賞金賞、D&AD 銅賞など受賞・入選多数。

 


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*本書は『ブレーン』『100万社のマーケティング』の地域特集/連載記事を再構成したものです。

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