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コラム

ヒーローたちの必殺マーケティング術

生き方と働き方の物語「HUGっと!プリキュア」の未来マーケティング

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絶望という名の敵

プリキュアの敵はクライアス社(=暗い明日社)。生徒指導に悩む教師や、モンスタークレーマーに怒られた花屋の店員など、人々のネガティブな感情を増幅し、「オシマイダー」という怪物を出現させます。

要するに敵は「絶望」です。

昔のヒーローものは敵といえど憎めない個性があって、悪役として人気が出たりしたものですが、オシマイダーにはそれが全くありません。

固有の名前がなく、キャラクターも(たぶん意図的に)思い入れのできない適当なデザインにとどめています。

おそらく絶望や自己喪失、諦めなど目に見えないあらゆる負の感情を象徴しているのでしょう。匿名の敵、というのがいかにも現代的です。

対するプリキュアは「ミライクリスタル」を手に入れた普通の女の子がプリキュアになります。

「絶望」に対するのはもちろん「希望」です。

希望だけがない国

「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」

2000年初頭、村上龍の小説「希望の国のエクソダス」に出てくる一節です。日本の中学生たち80万人が、希望のない日本を捨て新しい国家をつくる話ですが、中学生のポンちゃんが国会で話した上記の言葉が印象的で、今でも忘れられません。

中学生のネットワークを駆使したニュース動画の配信など、ネットビジネスで資金力をつけた子どもたちが、アジア通貨危機の混乱に乗じ、天文学的な資金を得て最終的には北海道に実質的な独立国家をつくる。

そこでは風力発電による自然エネルギーや地域通貨が使われ、電気自動車が走るのですが、そんなの所詮、小説の中だけの世界だと思っていました。

インターネットはまだダイヤルアップ接続してた時代です。スマホもYouTubeもない時代に、たった十数年後にそんな未来がくるなんてリアルに想像するのは難しかったのです。

でも今はもう、この小説が絵空事ではなくなっています。現実はもっともっと先をいっているかもしれない。

この小説のように、子どもたちがこの国に失望して日本を捨てる日がやってくる。そんな未来が現実になってもおかしくないのではないでしょうか。

次ページ 「生き方と働き方の物語」へ続く