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「マーケティングは死んだ」のか?「思想」として全社に普及させるには?【後編】

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インターブランド社の発表による “Best Global Brand 2017” のベスト3は、「アップル」「Google」「マイクロソフト」とすべてがIT・インターネット系の企業だった。
一方、世界の広告主ランキングでは上位トップ5に入る企業が擁するブランドはいずれもトップ10圏外にとどまった。
莫大な広告宣伝費が強固なブランド構築に必ずしもつながらず、はるかに小規模なマーケティング部門を擁する企業が次々とブランドイメージのトップを独占する。
この意味するところは、果たしてマーケティングの死なのか?
話題のマーケティング書の著者でもある気鋭のマーケターたちが青山ブックセンターに集い、トークイベントを開催。この問題の真相と未来への打ち手を議論した。

前編はこちら

お客さまと直接対話できる場を

徳力:これまでは顧客との間に小売や流通が入っていることでメーカーがデータを取りにくかった状況がありましたが、変わってきています。これから、メーカーは何を変えるべきだと思いますか?

岩井:お客さんと直接対話ができる企業。それがこれから評価されていくと思います。メーカーはこれまで、テレビCMなどの一方的なメディアを利用していましたが、今はデジタル化によって双方向にコミュニケーションをとれるものがある。さらに言うなら、お客さんとやり取りをする手法がデジタルである必要さえない。

例えばアメリカのあるアウトドアウェアメーカーは、店舗を持ちません。ではどうするかといえば、最初にいきなり主催大会をやって実際に着てもらう。そこでは顧客ともの凄くリッチな対話をし、エンゲージメントをつくれる。いったんエンゲージメントができれば、あとはオンラインでも構わない。対話の「場」と考えれば、今までと同じオフラインの接点でも使い方が全く変わってくる。

ブランドイメージのトップ企業は、テクノロジ-企業だからトップになったわけではなく、お客さんとの対話が常にあるからなんですね。

たとえばGoogleは何かを訊いたらちゃんと教えてくれ、facebookは何かを書き込めば反応がある。一方でユーザーがモノとしての商品を使っていても、そこに対話がなければブランドとコミュニケーションをしているという自覚は生まれません。

左から井上大輔氏(アウディ ジャパン)、奥谷孝司氏(オイシックスドット大地)、岩井琢磨氏(大広)、逸見光次郎氏、徳力基彦氏(アジャイルメディア・ネットワーク)

CMOとマーケティング部を廃止する!?

徳力:アップル社がその象徴ですね。最初にアップルが直販店であるアップルストアを作ろうとした時、こんなものは量販店の人たちが怒るから絶対に失敗する、と多くの人が反対していたのを良く覚えています。

岩井:でも、彼らは絶対に手放さなかったですよね。それは対話の場だったから。今はメーカー側もいろんな手段があるのでそういった場は作れるし、やらないといけないと思っている。

井上:店舗も、というか店舗こそもっとも強力なタッチポイントなわけですよね。マーケは思想である、という話しに戻ると、店舗の接客担当こそマーケティングという思想を理解していないといけない。その意味では、極論かもしれませんが、いっそのこと企業がCMO、そしてマーケティング部を廃止するというのはどうでしょう。思考実験として、そういう投げかけもあるのかな、と思います。

徳力:過激なアイデアに聞こえますけど、日本企業では案外それはアリかもしれないですね。マーケティングのやり方として、CMO1人がトップダウンでリードするのではなく、トヨタの「カイゼン」のようにボトムアップで会社全体で取り組むイメージですよね。

奥谷:ぼくは誰がマーケティングをやってもいいと思っています。だから特別マーケティングという部署はいらないんですよね。CEOとみんなで考え、どの部署がいいアイデアを出してもよい環境をつくる。

次ページ 「社内コミュニケーションこそ新たなマーケティングの第一歩」へ続く