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「マーケティングは死んだ」のか?「思想」として全社に普及させるには?【後編】

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まずは「勝ち筋しか見えない」
アイデアを実行する

徳力:さて、ここで参加者からの質問タイムを設けたいと思います。何か訊いてみたいことがあればどうぞ。

Q:井上さんにお聞きしたいのですが、タッチポイントがコントロールできない95%にお金をつかう、というのは具体的にどういったことでしょうか?
また、実際には実行に移す前に予算をつける必要があります。そこをどう乗り越えるべきなのかについても教えてください。

井上:以前、横浜ベイスターズが小学生にベースボールキャップをたくさん配ったことがあるのですが、私はあれこそが95%にお金をつかう好例だと思っています。

小学生がベイスターズのキャップをかぶって街を歩けば、もの凄くタッチポイントが増えますよね。親も連れてくるから単純にチケットの売り上げにもつながる。また、かぶった本人は「ファン」というロイヤルカスタマーになり、LTVも上がる。つまり、あの打ち手はどう考えても勝ち筋しか見えないんです。

95%の部分は未着手の領域ですから、そこにはすごい可能性がある。たとえば数百のアイデアを出したら、いくつかはこれと同じく勝ち筋しか見えない案があるはずです。まずはそれを実行してみる。
結果うまくいくわけですから、次からのチャレンジが通しやすくなる。好循環ですよね。
 
徳力:こういった例は、マクドナルドさんが商品の包み紙を変えて写真映えするようにしたりとか、実は世の中には色んな事例がありますよね。ただ、それがマーケティングの仕事だと認識されていなかった現実があるように思います。実は広告以外にもやれることが沢山あるのに、ついつい組織の壁の範囲で従来の仕事の繰り返しをしてしまっているケースは多いのではないでしょうか。
それでは、最後にひと言ずつ。明日から、まずはこんなことから始めてみたら、というヒントをください。

顧客視点を大事に、
全社員がマーケターの意識を持つ

逸見:組織をどうつなぐかを考えるには、結局マーケティングの視点が必要です。それはいかに顧客の視点になってものを考えるか、という話だから。今まで見えなかった顧客とのつながりが見えるようになり、様々な場面で「それってお客さんから見るとどうなんですかね?」と。
そこに加えて会員数とリピート数の数値を拾って話をすれば、みんなが耳を傾けてくれるはずです。つまり数字で明確化し、見える化することがいいきっかけになると思います。

岩井:実際には、毎日の売上を求められる部署と中長期のことを考える部署が、同じ視点で話すのはとても難しいんですね。でも、一人一人が隣の部署の人と話しをすると、もの凄くエネルギーが生まれることを日々感じています。
だから、違うKPIを持つ人同士が仲良くするというのは、小さなことに見えてとても大きなことなんです。ぜひそれをやっていただければと思います。

奥谷:私は、優れた「場」ってどこにあるのかな?企業ごとに一番お客さんに近いのはどこなんだろう?ということを部署にかかわりなく、常に考えてほしいと思います。
つまり、お客さんにどこで一番喜んでもらえているんだろう?ということ。確実に言えるのは、お金を払うという行為自体に喜びはないということ。買った後こそが大事なのであり、もう一度来たくなる「場」が出来ているかどうかが問われます。
メーカーであれば、お客さんとつながる場をいかにつくるか、何を楽しいと思ってもらえるかを考えると、いいアイデアが出てくるんじゃないかと思いますね。

井上:皆さんがCEOだったら、まずはマーケティング部やCMOを廃止すること。そして、全員にマーケティングという思想を持つようトップダウンで徹底させる。あるいは、トップダウンがなくても自走する強力な文化を醸成する。アップルやアマゾン、グーグルなどが、ある意味この例ではないでしょうか。そうでない場合は、先ほど述べたように啓蒙活動ですね。モルモットになる。あるいは地道に外国に布教を試みる宣教師みたいな存在でしょうか。これはにはクイックウィンがついてきて、アイデアを募ることで、外部の人を味方につけることができます。明日からできることですし、明日からやる価値があります。

徳力:マスマーケティングの時代の常識で考えると、どうしても今の時代の顧客の視点とズレてしまうことが増えているように思います。だからこそシンプルに、自分が一顧客、一ユーザーとしての視点でマーケティングを考えることが大事だということが改めてわかりました。
皆さん、どうもありがとうございました。

このイベントの様子は、「#マーケティングは死んだ」で語られています。ぜひチェックしてみてください。


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