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「マーケティングは死んだ」のか?「思想」として全社に普及させるには?【後編】

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社内コミュニケーションこそ
新たなマーケティングの第一歩

徳力:確かに創業者が健在な企業だと、創業者が顧客視点やマーケティング視点を持っているので事業はうまくいくことが多い印象です。一方で、サラリーマン社長が続くと、顧客よりも上司を重視する文化になってしまって、顧客から乖離していく傾向があるように思います。 

そこでみなさんにお聞きしたいのですが、「うちは社長がCMOだから大丈夫!」と言えない会社はどうしたらいいんでしょう?

奥谷:問題は、一つの商品が売れたということを、現場レベルの努力に還元されてしまいがちだという点。どこか単独の部署の成果に帰属させるのは難しく、ややもすると、「雨の日なのに頑張ってチラシを配ったから(売れた)」と、間違った成功体験として理解し、それが繰り返されてしまいます。売れたのは、実はマーケティングの成果かもしれませんよね?

営業も販売も数字しか見ていない。マーケティングの側も現場の理論がわからないままよくわからないカタカナ言葉を出してくる。それが結果として縦割りの組織を生んでいるんですね。「売れたら勝ち」という今の風潮について、マーケターももっと議論しなければいけないと思います。

井上:マーケティングのみならず、全ての部門にマーケティングという思想を理解してもらうこと。啓蒙活動ですね。そのために、マーケター、特にデジタルマーケターは自らモルモットになることです。
 
デジタルマーケティングの良さは、リーンでアジャイルなこと。検索広告であれば、今日から100円で新しいアイデアを試せます。営業の人とかは、こうすればいいのに、というマーケティングのアイデアを一つ二つ絶対に持っているので、ちょっと意見を聞かせてもらっていいですか?とヒアリングして、あわよくば小予算でちょっと試してみる。

そして「この前のアイデア、すごく使えましたよ」と声をかける。そうすると、もう心鷲づかみですよね。マーケティングを自分事化してもらい、「マーケティングは思想である」といったことや、全員でマーケティングを進めていく必要性が浸透するには時間がかかるかもしれませんが、短期的なクイックウィンもあって、営業だったり他部署の人を味方につけることができる。費用対効果の高い活動です。

逸見:大企業の組織がなかなか動かないのは、各部署ごとに目標や予算があるからです。大事なのは「そっちにはこんな指標があるよね。だからこれを一緒にやれば、こう変わるよ」と示してあげること。普段から関係部署とコミュニケーションを取っておくことがとても大事です。

岩井:企業というのは部ごとにKPIがあり、それに基づく予算を持っている。だから内部だけでは、横串を通すための動きが取りにくい部分が当然ある。そこで外部の人間を連れてきて、例えば「マーケティング本の著者を呼んだから、話をきこう」と誘うとみんなが集まり、その場で議論が始まることもある。外から、何がしかの「異分子」を持ち込んでくる。外の視点をうまく使う。そういったことが出来るひとは社内の問題を解決する力を持っていると思いますね。

徳力:確かに、同じことを社内の人間が言っても伝わらないのに、外部の人間や得意先の方の話だと俄然社内の通りが早い、ということがありますよね。

次ページ 「まずは「勝ち筋しか見えない」アイデアを実行する」へ続く