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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

自分の中にないものを埋めるように物語をつくっている(ゲスト:細田守)【後編】

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【前回コラム】「新作『未来のミライ』は長男の“ある行動”から生まれた(ゲスト:細田守)【前編】」はこちら

今回のゲストは先週に引き続き、7月20日公開の映画『未来のミライ』の監督・細田守さん。引き続き映画の制作秘話、そして細田さんと全く違う映画のつくり方をしているピクサーに対して、思っていることを赤裸々に語ってもらいました!

今回の登場人物紹介

左から、細田守、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、中村洋基(すぐおわレギュラーゲスト)。

※本記事は7月19日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

作品には自分自身の状態が反映する

中村:今回も先週に引き続き、明日公開の映画『未来のミライ』の監督、細田守さんをお迎えしてお送りします。よろしくお願いします!

細田:よろしくお願いします。

中村:『未来のミライ』の制作には、だいたいどのぐらいの期間がかかっているんですか?

細田:前回の『バケモノの子』が終わってからすぐに着手したので、3年間ですね。3年かかってやっと1本の作品ができました。

澤本:『バケモノの子』が終わってからとおっしゃったけど、『バケモノの子』の作業が全部終わる前にはじめているということなんですか?

細田:いや、終わって公開されて、お客さんの反応を見てから次はどんなものが良いかを考えだすので、本当に3年間ですね。

澤本:終わったから次どうしようかと。

細田:そうなんです。並行して公開する前から次の作品の準備をする人もいるかもしれないんですけど、そうじゃなくて、そのときどきの世の中、社会でどういうことがあるかというのが大事な気がするんです。最初から作品ありきで考えるんじゃなくて、みんなと一緒に相談してつくる感覚があるかもしれませんね。

中村:とても昔の作品ですけど、細田さんは『おジャ魔女どれみ ドッカ〜ン!』というアニメも…。

細田:懐かしいですね(笑)。

中村:それで細田さんが担当して話題になった回があって、その回だけ主人公が人生について真面目に悩むんですよ。その話のモチーフにY字路が出てきて、小学生の小さい主人公がどっちに行こうか、真面目に考えて、エイッと決めて。でも決めたら切ないクライマックスが待っているんです。

それまでの他の回と全く違うんですよ。だから何考えてるんだろうな、細田さんという人はと(笑)。でも細田さんは普遍的なテーマで、奇をてらってやっているわけでもないと思うんですよね。だから、『未来のミライ』にも通底する、「こういうテーマにしたい」だったり、他の人と違うポイントがテーマの見つけ方にあるのかなと。

細田:『おジャ魔女どれみ』は違うものをつくってやろうというつもりで考えていたわけじゃなくて、つくっているほうとしてはああなるしかなかったんです。つまり、自分自身が人生に生き惑っているという状態がつくるものに反映しちゃうんですね。だから、Y字路の前に佇んでいるのは“どれみ”であり、自分自身であり、ということです。

中村:なるほど!

細田:そういうところがすごくあると思うんですよ。「子ども向けの朝のアニメで何やってんだ!」といっぱい言われたけど、自分としてはやらざるをえないというか。つくり手として自分の問題意識は置いておくことができないぐらい追い詰められた状態で。

その後、『サマーウォーズ』から一貫して家族を描き続けているのも、身近なものが面白いという以前に問題意識がそこにあって、自分自身で解決したいというのかな。たとえば、家族っていったい何だか自分にはわからない、子どもを育てるってどういうことかわからない、今回も兄妹の話ですけど、僕自身は一人っ子なんですよ。

中村:細田さん自身は兄弟がいないと。

細田:うちの上の子も下が生まれるまでは一人っ子だったわけじゃない。でも下の子が生まれた瞬間に一人っ子じゃなくなるわけで、つまり僕の知らない人生を生きようとしてるのがうらやましくなっちゃって。もっと知らない葛藤や楽しさを味わっていくんだろうなと思うと、何かいいなと。そういうものを自分も映画の中で追体験してみたくなって、それでつくりだしたんです。だから、自分の中にないものを埋めるようにつくるということが傾向としてあるかもしれないんですよね。

中村:それを聞くと、完全にありますよね(笑)。

次ページ 「『未来のミライ』でお父さんを建築家にした理由」へ続く