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JAL、ベネッセが実践するデータ活用マーケティングの今 — アクティベーションデザインセミナー2018

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組織の連携とマーケターの良心が不可欠なデータ活用の展望

第3部では、「ビッグデータの社会的価値とその利用」をテーマに、ベネッセコーポレーションチャネル開発部課長の清水耕太郎氏、博報堂DYホールディングスマーケティング・テクノロジー・センター室長・青木雅人氏、大広執行役員CTO・大地伸和氏、日本航空Web販売部1to1マーケティンググループ アシスタントマネジャー・渋谷直正氏をパネラーに迎えたパネルディスカッションが行われた。

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長の青木雅人氏

冒頭では、BtoBtoCからBtoCにビジネスモデルが転換している企業も増えていることから、データ分析の必要性が増しているのではという話題に。たとえば、旅行会社に航空券を卸すビジネスが主であった航空会社も、ECサイトの登場によってBtoCの航空券販売が売上に占める割合が増えているからだ。

この話題に対して大地氏は「お客さまにダイレクトに向き合う商売をするようになると、自然とお客様のことを知ってお客様に最適なサービスを案内する必要性は出てくる」と同意。また渋谷氏も「ビジネスモデルが変わるということは、これまで取り組んでいなかったことをしていかなければならない。そのような中で、必然的に『蓄積されていくお客さまのデータを読み解くことで販売の促進につながるヒントを得られないか』という気持ちが生まれた」と続けた。

ベネッセコーポレーション チャネル開発部 課長の清水耕太郎氏

また、ベネッセの国内教育部門で新規顧客拡大を手掛ける清水氏は、デジタルデータの分析によって実現できる、スピード感を持った施策実行について説明。「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」の新規獲得は、蓄積された顧客データを分析してセグメントを作ってDMを送る手法が主である。その文化からか、Webサイトでもかつては訪問者のリマーケティングリストを溜めていた時代があった。しかし、データ分析が進むにつれて、お客様が訪問した時点で最適な入会の促し方をする必要があること、サイト離脱後にAmazonや楽天で市販の代替品を購入される人もいることなどが明らかになってきた。

この結果から「せっかく来てくれた人がいても、無駄なリードタイムが発生してお客様を失ってしまう。だからこそWebサイトに訪れた人にはすぐにWeb広告でリターゲティングするなど、クイックにアプローチするようにした。データは、社内に溜めて時間を掛けて分析すべきものと、閲覧ページや訪問回数のように溜める必要がなくすぐに活用するものを分けて考えた方がいい」と語った。

続いて、話題はデータ活用を社内で推進する際の体制づくりに移った。体制は、分析部隊が独立して部門や部署を持つCOE型(組織横断型専門集団型)と、事業部や部門の中に分析担当のチームが所属する部門内型の2つに分けられる。

各部門の中に数名ずつ分析担当を置いているJALの渋谷氏は「COE型は、他部署で行っている事業の課題をデータから発掘するところから手掛ける。だからこそ、データ分析の結果を各事業部門にフィードバックして活用してもらうところにエネルギーを使う。一方で私たちは、日々部門の中に存在している『売上が減少した』や『商品Aが売れない』といった課題をデータ分析から解決することが命題となる。もちろん、喫緊の課題に対する分析結果を返すので、分析によってその課題の解決の道筋を見ることで、現場でもすぐに活用してもらえる。」と話した。

一方で、日々さまざまな企業のデータ分析やデジタルマーケティングを支援している博報堂DYホールディングスと大広も、それぞれの見解について語った。青木氏は、事業部単位ではうまくいっていても、企業の部門間でのデータ統合・分析に難しさを感じている企業が多いことに言及。

「たとえばWeb広告の戦略や施策を考える部門と、オウンドメディアを運営する部門が分かれているとする。彼らがターゲットとする見込み顧客は、ときには広告をクリックし、別の日はオウンドメディアの記事を読むといった行動をしているにもかかわらず、統合してデータを見ていないがために、広告がオーバーフリークエンシーになることも往々にしてある」と具体例を説明。大地氏は「そうした分断が起こらないように、客観的な立場から部門と部門をつなぐ人間が必要」と続け、「社内でその役割を担える方がおらず、なかなか前進しない場合は、広告会社など外部パートナーの人間をその役割に据えるべき。」と話した。

大広 執行役員 CTOの大地伸和氏

話題は、データ活用を検討する際に多くの企業が懸念する「生活者から否定的な感情を抱かれないか」という不安についても広がった。このテーマにおいて共通していた各社の意見は、「受け取るお客さまにとって、役立ち、喜ばれるアウトプットであれ」ということだ。「法律上は大丈夫でも、お客さまに嫌がられ、理解されないデータ活用もあるのは事実。どのようなデータ活用なら大丈夫かという判断は、私たちマーケターの良心で判断するしかない。」とのコメントが上がった。

最後は、今後推進していきたいデータ活用のあり方の話に。清水氏は自社でいま取り組もうとしていることに言及し、「Web上のより細かな行動解析をしていきたい。どのページにどの程度の時間滞在したのかという情報だけでなく、たとえばスマートフォンを触る指先の動きからページ内のどの部分を見ているのかを探るといったようなことができれば」と話せば、渋谷氏はあるべき分析体制の理想について「自社のデータを誰もがいつでも自由に分析できる環境にならないと、本当の意味でのデータドリブンとは言えない」と意見を述べた。

2人の話を受けて、青木氏は「データを使って社会課題を解決する取り組みを進めることで、データ活用に対する不安感を取り除いていくことが必要」と説明。現在は「ドラッグストアの購買データやバイタルデータを統合することで、健康状態を測り、人の長生きや健康に寄与することができないかといった」狙いの企画も進めているそうだ。

最後に、大地氏は「データ分析やデータ活用の一番の目的は、お客さまにとって新しい気付きや喜びを与えること。このことを忘れずに施策を行ってほしい」と会場に呼びかけて、セミナーを締めくくった。


お問い合わせ
株式会社 大広

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