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jekiデジタルシフトのキーマンが語る、広告会社の未来と可能性 facilitated by 宣伝会議

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ハウスエージェンシー、媒体社、総合広告会社の3つの側面を持つジェイアール東日本企画(jeki)。jekiは急速に進むデジタルシフトへの対応を目指し、常務取締役である高橋敦司氏のCDO就任と、小霜和也氏のデジタルアドバイザー就任を発表した。jekiが考える「デジタルシフト」とは一体どんなものなのか。そして、そこから見えてくる広告会社の未来とは。小霜氏、高橋氏と、広告主側の立場でも広告会社を見てきた経験のある本間充氏の3名に聞いた。

写真左から本間充氏、 高橋敦司氏(ジェイアール東日本企画 CDO)、小霜和也氏。

「デジタル化」は広告の世界に何をもたらしたのか?

—小霜さんはクリエイターとして、本間さんと高橋さんは事業者側も経験されたお立場と、同じ広告・マーケティングに携わりながら、立ち位置が異なると思います。まずはお三方に今日のテーマである、「デジタル化」についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。そもそも、マーケティングのデジタル化とは何を意味するものでしょうか。

本間充氏

本間:今は、私たちが思っている以上に生活者の方がデジタル化していると言えます。広告の出し方も、同じ時間、同じ場所で、全ての人に同じものを見せるワンメッセージの時代から、お客さま一人ひとりに合わせてパーソナライズできる時代になっている。そういう意味からも、広告メディアがデジタル化しているだけではなく、広告コミュニケーション全体がデジタル化していると考えています。

小霜:僕は自分の仕事をクライアントの課題を解決することだと考えてきました。ですからデジタル化したことによって、課題解決のための武器が増えた、よりいろんな課題に適した提案がしやすくなったと感じています。

広告業界はテレビCMとデジタル広告を区別して捉えがちですが、それは生活者にとってはまったく関係のないことで。クライアントの課題解決のためには、本来はすべてのメディアをシームレスに捉える必要があると考えています。

高橋:広告主側でマーケターをしていた経験からすると、デジタル化によって、コミュニケーションの「上流」「下流」という意識や順序を自由に変えることができるし、もし、問題があってもすぐやり直しができるようになったと捉えています。

広告会社の取締役という、現在の立場で見れば、デジタル化によって、あらゆる面でローコスト化が進み、アジャイルな対応が求められ、複数のクリエイティブも瞬時に制作・変更できる可能性が生まれたことを認識しなければならない。そうした環境下でマーケティングからコミュニケーションまでの流れを考えていくことが「デジタルシフト」だと考えています。

—広告会社である一方で媒体社でもあるjekiで働く社員は、この「デジタル化」にどう対応していけばよいでしょうか。

高橋敦司氏

高橋:私たちの事業はJR東日本グループのハウスエージェンシー、媒体社、そして現在では売上の4割を占める中核事業とも言える、一般広告会社の3つのボックスから構成されます。しかし、自分たちでただ、その「3ボックス」のラベリングをあまりにも硬直化して捉え、ミックスアップする意識を持たないのは危険。デジタル化はそうした定義をも無効化してしまう可能性を持っています。

今後は、クライアントが自ら課題を見つけだし、広告会社はそれに対するソリューションをクライアントが認識している課題の範囲内で提案する、という従来型の仕事の進め方では立ちゆかなくなります。クライアントから見て「jekiにしかできない仕事」をデジタル領域で考えれば、おのずとよりマーケティングの上流の、課題発見のところからプレイすることを望まれるはずです。だからこそ、jekiのデジタルビジネスモデルはまったく新しいものだという意識が必要です。

本間:jekiさんの一番のメリットは交通広告という媒体を持っていること。さらに、JR東日本管内という非常に乗降客数の多い場所や、そこに有効な広告を掲出できる場所を持っています。そうした「他にはない強みは何か?」を理解し、そこにデジタルの要素を加えることで何ができるのか、それはどうすればマネタイズできるのかを考えたときに今までできなかったことができるようになるチャンスがありますよね。今、自分たちが持っているものを要素ごとに分解して、そこにデジタルを掛け合わせることで何が起こるのか考え、実行していくことが大事になると思います。

—デジタル化が進むと「広告」の定義や広告会社の役割は変わっていくのでしょうか。

小霜和也氏

小霜:テレビCMは、必要のない商品情報に「付き合わされるもの」でもありました。ですから、誰が見ても受け容れられる、最大公約数的に面白いものがクリエイティブとして優れているとされてきました。一方でWebはターゲティングが可能です。その精度が高くなればなるほど、エンタテインメント性はむしろ余計で、必要な情報だけで良いということになって来る。そして、僕の経験から言えばその方が売上に貢献する傾向があります。

これはターゲティングが緻密にできているからエンタテインメントはなくても良い、これはターゲティングが大ざっぱだからマス的エンタテインメントが必要、などとケースバイケースでクリエイティブを決めていく、そこまで俯瞰する能力がこれからのクリエイティブディレクターに求められると思っています。

本間:広告は「広く告げるもの」なので、特に80年代から90年代の日本経済はマス広告が刺さった。近年は、あらゆる面でコモディティ化が進み、「私に一番ふさわしいものを教えて欲しい」と感じる人が増えています。

小霜さんがおっしゃる通り、エンタテインメント性はいらないという人もいれば、深く考えずに一番面白いものが欲しいという人もいるでしょう。ですが、生活者の情報の受け取り方を判断し、ふさわしい情報を伝え、広告主をサポートするという本質は変わらない。ただクリエイティブの手法も媒体も変わっているので、そこに対応する柔軟さは必要です。

自分が何者なのかを問い直し、役割をデザインすることで強みを最大化する

—デジタル化が広告、メディア界のビジネスモデルも変えてしまうと思いますか。

続きを読む (恵比寿発、違いを生み出す広告会社の ひと・こと・ものサイト)