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日本初!映画×テレビ×Twitterがもたらした #ちはやみる 成功の裏側

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「自分ごと」と感じてもらうため、
必要なコンセプトとそれを体現するこだわり

北島 直明 氏

近年のソーシャルメディアを取り巻く環境について北島氏は「かつて、テレビに出ているような有名人は“テレビの中の人”でした。今は、Twitterをはじめとして、そうした中の人に直接コメントができるようになった。憧れの俳優に『今日の撮影お疲れさま』と直接、話しかけることができる。有名人と視聴者・観客との間の距離感がなくなってきています。そうなると、その関係性を大事にした方が良くて、公式アカウントだとしても堅苦しい言葉や、情報発信だけではお客様との距離を縮められない。一般的な公式アカウントのフォロワー数が伸びないのもこれが原因だと思う」と話す。

今回の施策についても「見ている人と映画との距離を近づけて、Twitterという空間のなかでは上も下もなく、仲間意識を感じ、この作品がなんとなく自分のものと思ってもらいたかった」(北島氏)。

視聴者との距離感を縮めるために、配信時のスタジオセットや衣装にはこだわった。「自宅で一緒に見ているような雰囲気」というコンセプトを体現するため、畳の部屋にコタツを置き、キャストにはジャージを着用してもらった。あえて台本もつくらず、スタジオ内では北島氏が必要に応じて指示をする以外は自由に振舞ってもらった。「やらされている、ではなく、出演者自身が楽しんでいる、という空気を作るのが重要。綺麗に着飾って話しても、それでは普通のテレビ番組と変わらない。時間・空間・温度を共有している、という感じが興味を喚起すると思うんです」(北島氏)。

またテレビ放送にはCMが入るため、その時間帯に配信へ視聴が偏らないようにするため、配信用のカメラにキャストが手書きで「現在CM中」と書いた紙で“目隠し”し、双方でうまく視聴をシェアする工夫をした。この手書きの紙も学生が作った文化祭の制作物をイメージし、コンセプトに沿ったものになっている。

キャストの素の顔が反響、視聴数は100万超え

通常、Periscopeで配信を行う場合、主な視聴デバイスはスマートフォンであり、その小さな画面ではセットや背景にこだわる必要性は高くないと考えられることが多い。しかし、木和田氏は「今回のコンセプトを考えたときに、そのこだわりは重要でした。北島さんがTwitterでPeriscopeを使う意味やトーン&マナーを理解して進めていただいたことは成功のポイントだと感じています」と話し、セットや衣装へのこだわりが視聴者と目線を合わせるために有効だったと指摘する。

配信中には新田真剣佑さんの自由すぎる行動を他のキャストがツッコんだり、野村周平さんが放送時間の都合で自身の出演シーンがカットされていることに言及したりするなど、キャストの人間関係やキャラクターが見えたほか、放送を見ていた監督の小泉徳宏さんも撮影の裏話をツイートした。「俳優や監督も含めてTwitterで絡むことで、作品が公式に伝える情報ではない『裏側』的なものが見えたのも、視聴者と目線を合わせることにつながったのではないかと感じました」(森田氏)。

Periscopeの視聴者数は両配信ともに100万を超え、ツイート数についても「『上の句』の放送日はキャストが朝からテレビ出演もしており、ツイートする機会はたくさんあったにもかかわらず、ライブ配信中に最も大きなツイートのスパイクが生まれました。ただキャストパワーに頼るのではなく、媒体特性に基づいた仕掛け作りと、コンセプトに基づいた作り込みの重要性を認識しました」(木和田氏)。北島氏も、「視聴者が自らツイートしてくれたということは、作品を『自分ごと』だと思ってもらえた証拠。ツイート数が増えたことは非常に価値があること」だと話す。

井戸端会議の感覚で楽しむ、日本人とTwitterは相性が良い

本施策が盛り上がった一因として、キャストが個人のTwitterアカウントを持ち、普段から発信していたことも大きい。「広瀬すずさん、野村周平さん、新田真剣佑さんのフォロワーは合わせて500万人を超えている。そうなるともはやメディアです。そこでただ告知的に情報を流すのではなく、生配信中にもツイートしてもらい、彼らのパーソナルな部分を生かした。俳優がツイートしている様子を見られるというのはなかなかない経験だったと思う」(北島氏)。

公式アカウントからのツイート

広瀬すずさんからの告知ツイート

北島氏はまた、日本人とTwitterは相性が良いとも指摘する。「井戸端会議という言葉があるように、日本人はうわさ話や他人の秘密が気になる国民性がある。加えて、映画にも『百人一首ってツイートだよね』というセリフが出てきますが、五・七・五・七・七のような定型に言葉を当てはめていくTwitterは日本の文化に合っていると感じます」(北島氏)

「ちはやふる−結び−」の興行収入は、17億5000万円を達成し、シリーズ最高を記録した。今回、映画/テレビ/Twitterが密に連携し、大きな成果をあげたことは、その相性の良さを証明することにもつながった。