「Autonomous」データベースへの進化 高まる“連携”の必要性

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AIやディープラーニングの技術がビジネスの世界にも広がり、社会インフラや製造業、サプライチェーンなどに幅広く及ぶと考えられている。AIの進歩は世の中をいかに変えるのか。「全てが自動化された世界へ」を標ぼうし、Autonomous(自律型)Databaseを掲げる日本オラクル CEOのフランク・オーバーマイヤー氏と、人工知能技術の開発、人材育成、社会実装をテーマに研究活動を進める東京大学 特任准教授の松尾豊氏に聞く(本文中・敬称略)。
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(左)日本オラクル 取締役 執行役社長 最高経営責任者(CEO) フランク・オーバーマイヤー氏
(右)東京大学 特任准教授 松尾 豊氏

産業界にAIが浸透する時代 データベースの構造も変化が必要

フランク:日本オラクルのCEOに就任した1年半前、日本はどのような市場なのか、どのようなポジションで我々が参入するべきかを探るため、さまざまな日本企業の経営者に話を聞きました。その会話の中で、AIやディープラーニングについての話題が上がるたび、松尾先生のお名前を何度も伺いました。これまでの活動や達成された研究について、非常に感銘を受けています。

松尾:私の研究室では、人工知能やWebの研究を行っています。もともとWeb上の情報を大量に集め、Webマイニング(Web上のデータから有用な情報を抽出する技術)や、さまざまなセグメンテーションによる情報分析を行ってきました。2012年にディープラーニングの性能が飛躍的に向上してからは、ディープラーニングの研究に注力しています。

フランク:松尾先生の研究領域は、私にとっても大変興味深いものです。というのも当社は長年にわたって、データ管理の領域にフォーカスして事業を行ってきたからです。加えて、データを取り扱う多様なツールも提供しています。世界で43万社の顧客を抱える当社は、データ取扱量という点で世界最大手と言えるでしょう。この大量のデータを用いて、顧客の行動パターンや振る舞いを見極め、ひいては新たなビジネスモデルを生み出すきっかけを提供しているのが私たちのビジネスです。

昨今、AIやディープラーニングの話がさまざまな文脈の中で出てきますが、私たちが提供しているデータベースやIoT、チャットボットなどのあらゆる製品のIPにはAIが実装されています。もはや、単体で切り離されてAIが提供されるのではなく、ありとあらゆる製品にAIが備わっている。製品同士の通信や、大量のデータを活用しながら、とても速いスピードで学習していくことも可能になっています。

松尾:あらゆるところでAIが使用されていくと、現在の情報システムの構造では適さない場面が出てきますよね。現在のCPUのような処理よりも、並列で大量データを処理するような構造のほうが適してくる。そうした中、データベースはどのように変わっていくのでしょうか。

フランク:非常に素晴らしい観点ですね。AIの今後について考えていくと、現在のインフラの構造、提供している処理能力では不十分であることが分かる。そして、この問題に対する考え方は2つあります。ひとつが今、仰ったように並列処理できるような構造にする。もうひとつが、データベースを含めたエンジニアードシステムを最適化するやり方です。具体的には、私たちはAutonomous(自律型)データベースを提供しています。

この2つのアプローチは、同時に行われるべきだと思います。ディープラーニングであれAIであれ、データベースの中で実行できるような標準化や自律化を推し進めつつ、一方でハードウェア自体も最適化していく。そうすることで並列処理だけではない形でCPUの処理能力を向上していくわけです。

ディープラーニング進化の先に“依存性の高い社会”がある

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松尾:ディープラーニングが進化していくと、さまざまな面白いことが起こると考えています。

例えば、人間の「手」。脳から指令が行くと指が動くことを“学習”して指が動いていくわけですが、「指」が動いて「手」が動く、「手」が動いて「腕」が動く。自律系のものが積み重なって、大きなシステムをつくっているんです。これは生物の構造としては自然なことです。ですから自動運転の車が、通信や電源が切れた瞬間に、いきなりすべてが止まるという構造はおかしいんですね。

例えば人間なら、酔っぱらっていても家には帰ることができる。自動運転でもこのように、最低限、路肩に駐車するようなことができなければならない。ディープラーニングは今後、中心的なシステムがひとつある形ではなく、複数の自律したシステムが積み重なっていくように進化していくと考えています。これは先ほどの自律型データベースの話につながるのではないでしょうか。

フランク:非常に面白いテーマです。一般的に、さまざまな形で自律型のシステムが生まれてくると、今度はめざましいスピードで“依存性”が生まれてくるのです。社会も同じだと思います。単体の自律型システムが出てくると、それらが“つながる”必要性が出てくる。

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先ほどの自動運転の話で言うと、自動車メーカーがまだ自社の中での効率的なシステムを考えている段階です。“通信が切れても、最低限、路肩に駐車できるようにするためには”というレベルにまで想いを馳せるために取り組むべきことは、例えば電力会社と連携するといった類のこと。つまり他業種、国、社会全体を巻き込む必要があるのです。

技術自体はめまぐるしく進化しています。例えば我々の本社にある自律型データベースには、この数年、人の手は一切触れていません。世界中の顧客のデータベースから匿名化した情報を読み取り、データベースそのもののテーブルや構造を学習しながら自己提案し、自己調整し、自己検知し、自己監視し、自己修復している。こうしたインテリジェンスのあるものを、どう活用していくのか、どう連携させていくのか。社会側の基盤やルールづくりが必要です。

松尾:いろいろなものを前提にしながら学習していく。その過程で依存性が高まっていくということについて私も非常に興味があります。ですが、データベースのテーブル構造まで含めて学習するのは、人間の知的作業の中でもレベルが高く難しいことに思いますが。

フランク:我々の米国の本社までお越しいただければお分かりいただけると思いますが、別の切り口から説明しましょう。データベースが学ぶためには無論データが必要になりますよね。データが大量にあればあるほど、より高速にAIは学習することが可能です。

そこでこの数年間、当社のデータベースが何をしていたかというと、世界中で他のデータベースがしていたことをフィードしながら学んでいたのです。世界中に顧客を持つ当社の強みを生かし、そこから得られたデータを匿名化された形でフィードしていたわけです。これは、つまり他のデータベースのインテリジェンスが、そのままそのデータベースに対してフィードされていく形と言えます。この仕組みによりデータベース単体の中でも自己解決や自己チューニングなど、あらゆることが自律的にできるようになるのです。さらにテーブルや構成は、常に変わっていくことを前提にして、他がこうであったからこうなるだろうと予測することができます。

最も高性能になるようにプログラミングされたこのデータベースは、優れたビジネスモデルを編み出すことに主眼を置かれてはいません。データベースがあまりにもインテリジェントになりすぎてコントロールできなくならないよう、何らかの形で当局での規制をする必要があるほどです。

松尾:ポテンシャルも大きいですし、世界のデータを見渡せている素晴らしいシステムだと思います。現在、日本国内ではデータの連携が叫ばれていますが、なかなか進んでいません。そこを政府が何とか推進したいと考えているときに、今のような仕組みが使える状態にあれば、データとデータが結びつくことで新たな示唆をもたらしてくれると企業も理解でき、データ連携も進んでいくかもしれませんね。

産学連携し、協議する場やリードしていくプレイヤーが必要

フランク:日本の大企業の経営者とお話すると、多くの企業がデータ連携について関心を持っていると分かります。ただし、求めているレベルや深さは異なります。

例えば、トヨタ様が発表しているように製造業は、AIやディープラーニングの技術で工場やサプライチェーンに革命を起こしたいと考えていらっしゃる。とすると、実現するまでの複雑さも、社会へのインパクトも大きく変わります。私の出身国であるドイツで起きた、インダストリー4.0(第4の産業革命)の動きもそう。そこまでの変革が起きると、社会全体や雇用そのものを大きく変えることになるでしょう。

松尾:だからこそ、日本でも企業ごとやローカルといった局所間に陥らずに、全体で取り組むべきことだと思います。と言っても、それは政府の責任という簡単な話でもない。従来のように“標準モデル”をつくるのではなく、データ連携しやすい情報の“切り口”や、利用することでメリットが出るように、うまく“デザイン”し、実行していくことが求められるでしょう。

フランク:私たちのような企業はどのような責任を担うべきとお考えでしょうか。

松尾:リードしていくのは、国だけではなく、業界のトップ企業でも、日本オラクルさんのような企業でも良いと思います。さまざまな業界の知識を生かしながら、実行していくプレイヤーが必要だと感じています。変化の“総論”自体は皆、賛成だと言っている。ところが具体的な話ができていない。細かな深い知識が必要だからです。

例えば商品マスタひとつでも、スーパーマーケットの具体的な状況を知らない人がつくると、スーパーマーケットにおいて重要な「生鮮食品」というカテゴリーを「その他」にまとめてしまいかねない。そういった細かい部分の定義は難しいですが、きちんとやる必要があります。有識者は総論としてまとめていったり、具体的にどうやるのかを考えたりする役割が求められると思います。

フランク:政府、産業界、大学、各分野の人がそれぞれの役割を果たす形が好ましいのでしょうね。適任者が会して、その上で出発点を見いだしていく。やり方としては総論の理論から始め、深い知識でもってエンドトゥエンドで定義をしていくこともできますし、まず出発点はここで、そこからどう始めていくかという定義の仕方もできます。そういった合議体のようなものが生まれてくると良いのではないでしょうか。

松尾:ディープラーニングは、カメラや機械、ロボットと組み合わせていくので日本の強みが生きやすい技術と言えます。日本なりの機械やロボットと結びつけて現場の強みを生かすような新しい産業のつくり方があるのではないかと考えています。



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