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初の「新聞広告のためのCM」が放映に 澤本嘉光氏に聞く、制作の舞台裏

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4月8日から関東地区では、春の新聞週間に合わせて「新聞広告の活用を促す」ためのCMがタクシーアドで放映された。出稿したのは、読売新聞社だ。CMを通して、新聞広告の魅力を伝えるというのは、これまでになかった切り口。CMを制作した電通の澤本嘉光氏にその狙い、さらにクリエーターから見た、新聞広告の魅力について話を聞いた。

電通 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター 澤本嘉光氏

社長にも大臣にも、新聞広告なら知らせたいことを届けられる!

4月8日から都内の約3200台のタクシーで、タクシーアドを流した。

─CMを使って新聞広告の魅力を発信するという取り組みは、どのような経緯で実現したのでしょうか。

「春の新聞週間に合わせて、新聞広告を盛り上げたい」という要望を受けたのがきっかけです。もともと昨年、電通の中で「もっとクライアントが新聞広告を使いたくなる、起爆剤となるテレビCMを打てないか」という話は出ていたんです。

そこで、改めて「新聞広告ってなんだろう?」と根っこから掘り返しながら、CMに限らず、今どんなことが必要かを考えていたんです。いろんなアイデアが出ました。その中で、新聞社自身がCMを通して「新聞広告の強み」を訴えることは、それだけでもニュース性がある手段だと思いました。

それでは今、新聞広告はどう「強い」のか。改めて思ったのは、新聞とは各家庭に届く「1対マス」の媒体であると同時に、実は「1対1」で語りかけることに適しているメディアなのではないか、ということです。

たとえば新聞は企業の経営者や国を動かす議員や大臣にも直接届き、むしろそういう層の方々に読まれているメディアです。普段は話すことすらできない人に対しても、新聞を通してなら意見を届けることができる。そうした“特定の誰かに知らせたいことを直接、届けられる場所”として新聞広告を描いたらどうだろう、と。

そこでCMでは社長や大臣など、普段なら知らせたいことを伝えられない相手にでも届けることができる、ということをまず訴求しました。

コンテンツに話題性があれば、SNSを通して拡散される

もう1点、現代ならではの新聞広告の使い方は、Webにおける「拡散」を見込んだクリエーティブです。ビジュアルとしてもインパクトがある新聞広告や、内容自体にニュース性がある新聞広告は話題となり、読者が写真を撮ってSNSで拡散してくれる。

つまり、広告にコンテンツとしての話題性や価値があれば、新聞を購読している人以外にも届いている。こうした整理のもと、CMは、この「1対1でメッセージを届けられる」「拡散されて、読者以外にも届く」という2点を、今回は広告の魅力として柱にし、企画しています。

─クライアントとなる宣伝部の方をメインターゲットにしたCMなのでしょうか。

もちろん、新聞広告の活用を検討するクライアントの宣伝部の方に伝えたい、という考えが主軸にあるものの、現場で広告の活用を考える人に限らず、その周りの人、会社の他の部署の人やご家族にも届けられたら、少し新聞に対する認識が変化するのではないかと思いました。

まずは新聞社が多くの人に向けて発信している、その姿勢が大事。現場で広告を検討している人たちにとっては、そのこと自体がニュースになって届くはず。このCMは、SNSやWebメディアなどを通じて全国に広がっていく可能性も十分にあると思います。

良い事例が共有されれば、クリエーターの意識も変わる

─広告のつくり手として、いま新聞広告をつくることについて、どのようにお考えですか。

写真に撮られてSNSで拡散されていく新聞広告には、拡散される要素があります。たとえば宝島社の企業広告のように、ビジュアルのインパクトで拡散されるもの。あるいはゴディバの「日本は、義理チョコをやめよう。」の新聞広告のように、主張を含んでいるもの。何かしらの広告としての核や主張があれば、新聞広告はもっと多くの人を振り向かせることができるはず。つくり手側も、どの要素を入れ込むのかを意識しなければなりません。

今は、クリエーター側もクライアント側も「良い新聞広告の事例を知らない」だけではないかと思います。良い事例を知らないと、活用してみようとも思えない。どのようなものが拡散していくのかのイメージも持てない。電通社員に対しても、クライアントさんに対しても、このCMを契機に、じわじわと新聞広告の良い事例を共有していけたら良いのではないでしょうか。

それには、できることがいろいろと策としてあると思っています。アートディレクターの副田高行さんが、39年にわたって制作に携わった新聞広告をまとめられた冊子を見て、新聞広告って素晴らしいなと、その面白さを改めて感じました。

コンテンツとして魅力を持ってさえいれば、きちんと届けられる媒体なのだということがわかれば、つくり手側の意識も変わると思います。全面広告ならデザインに凝るという方向性もあるし、小枠ならコピーにこだわるという方向性もある。「面白いな」「最近、この小枠で変なコピーの広告が続いているな」と思ってもらえれば、受け手側の中で勝手に拡がっていく。

「新聞の購読者は年齢が高めの層が多いからシニア層に向けた広告表現だけを」ということではないのだと、意識が変わるのではないでしょうか。

新聞広告を活用する層以外にも届けることに意味がある

─新聞広告を販売している営業の方も重要なステークホルダーだと思います。その方たちの背中を押すようなCMでもありますね。

「こんなCMを放映している」「新聞広告は最近、こんな使い方ができるんですよ」と“話題にできる”こと、セールストークのネタにできるだけで、このCMは重要な意味を持ちます。ですから、実は今回の取り組みはCMの使い方としても新境地に挑戦しています。

直接のターゲットである“新聞広告を活用する層”そのものは限定的だけれど、その人たちに届けば相当な効果を発揮するのであれば、CMをつくる意義がある。そう思うと、新聞広告の可能性を訴求するCMって、まだまだつくれそうだなと思いますね。



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読売新聞東京本社広告局

メール:mark@yomiuri.com
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