新時代の店舗が担う3つの役割 ニューヨーク最新事例から(その3)

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前回の<顧客を知り、商品開発やマーケティング戦略につなげる>店舗に続き、パナソニックノースアメリカの橘匠実氏がニューヨークにおける事例を紹介します。

その3:<サービスのロイヤルリティを高める>店舗

<ブランドの世界観を伝え、体験してもらう><顧客を知り、商品開発やマーケティング戦略につなげる>に加えて3つ目は、サービスのロイヤルリティを高めるために店舗が活用されているということです。

例えば、創業者が「東京の地下鉄を見本にして展開した」という「The New Stand」は良い事例だと思います。The New Standはニューヨークの地下鉄構内に展開する小売店で、店舗が独自にセレクトしたユニーク食品や飲料、おみやげなどの商品が小さなスペースに並べられています。

(地下鉄の駅構内に店舗を構える、The New Standのキオスク型店舗 *Mediumより)

さらに興味深いのは同社が提供するアプリ「NEW STAND」との連動です。実際に使ってみると、アプリが提供するサービスがバラエティに富んでいることに気づきます。例えばニューヨーク近郊で起こったニュースを紹介したり、週末のお出かけスポットを提案したり。さらに、季節に合わせた「Spotify」のプレイリストなども提供しています。それらはインターネットにつながっていなくても見られることから、特に通勤時の地下鉄にて重宝します。(ニューヨークの地下鉄はいまだに多くの場所が圏外なのです…。)

このアプリでコンテンツを見れば見るほどにポイントが貯まり、そのポイントは「THE NEW STAND」店舗での買い物に利用できます。更に、アプリで購入した商品は、場所を指定して店舗で受け取ることも可能。アプリであと一歩届かないサービスの部分を店舗で補うという役割を果たしています。これにより、アプリを通じたキュレーション・Eコマースサービスを補完し、ロイヤルティを高める役割としてリアルな店舗を活用していると言えます。

世界最大のコワーキングスペースWeWorkがSOHOに構える大型オフィス「WeWork 205 Hudson」内にあるWeMRKT(ウィー・マーケット)の取り組みも興味深いです。WeMRKTはWeWorkに入居する企業がつくった商品を販売し、テストマーケティングに利用できる小売スペースです。

コワーキングスペースは、ただオフィスを構えて仕事をするだけではなく、入居者同士のコラボレーションが生まれることで、イノベーションが起きやすいことが利点と言われます。

普段から隣人として接している入居者が作った、「大きく市場にリリースする前の、先進的なコンセプトをもった商品」に出会えることは入居者にとってもわくわくする取り組みですし、販売側にとっても、身近な人たちに対してテストマーケティングができる良い機会になります。WeWorkにとっても、このような小売サービスを提供することで、自社へのロイヤルティを高め、コワーキング事業の差別化につながっていると言えるのではないでしょうか。

(入居者が手掛けた商品が並ぶ、WeMRKTの様子 *WeWork

ブランドの世界観をリアルとインターネットで横断的に作り上げ、顧客にファンになってもらう。
さらに来店した顧客を深く知り、それを商品開発やマーケティングにつなげる。
そして店舗でのサービスを通じて、いっそうブランドへのロイヤルティを高めてもらう。

一口に店舗と言っても、これだけの役割を持っていると考えると、面白くありませんか?

大量生産・大量消費のブランドに満たされなくなった顧客は、従来以上にその商品を買う理由、裏側にあるストーリーに価値を感じています。ブランドの意義を明確にし、顧客と積極的にコミュニケーションを取り、得たフィードバックを商品に還元していくプロセスを通じて、その世界観をまるごと好きになってもらう。そのような顧客体験を基軸にブランドをつくりあげていく、ニューヨークのD2Cブランドから学べることは多くあるはずです。

橘 匠実
パナソニックノースアメリカ
マーケティング デジタル&コミュニケーションズ トレーニー

2010年、パナソニック入社。資材の調達部門を経て、2014年より同社ブランドコミュニケーション本部にて、国内外の展示会企画業務に従事。2017年より、海外トレーニーとしてパナソニックノースアメリカへ出向。北米でのブランディング・マーケティング活動に従事する傍ら、現地で見つけた最新のビジネストレンドやニュースについて、情報発信を行う。
Twitter : @takuminy02
note : https://note.mu/takumi0131

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