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さとなお氏ら3者がファンベースカンパニーを設立 元ネスレ日本の津田氏も参加

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ファンベースは手法でもソリューションでもなく、考え方

—これまでのマーケティングと特に大きく異なる点はどこでしょうか。

佐藤:これまでのマーケティングは、生活者がなぜ買わないかを調査し考えて、悪いところを改善しようとしてきました。一方でファンベースは、すでにファンに愛されている「良いところ」に着目して、そこを伸ばそうとする考え方です。ファンにもっともっと好きになってもらう。それが80%の売上をキープするだけでなく、LTVが上がることでの売上アップにもつながるし、口コミを起こして新規顧客を連れてくることにもつながっていきます。

ただ日本のマーケティング業界は、マス広告による認知獲得・新規顧客獲得に強い成功体験があるので、なかなか変えられません。新規よりも既存のお客さま、特にファンを大事にしようという方針に舵を切るのは経営者でないとなかなか難しい。その点では、経営課題の領域でもありますね。

津田:知り合いの経営者の課題を聞いていると、ファンベースの考え方で解決できることは多くあると感じます。ファンベースについての正しい理解を広めていくのが目下の課題でもあります。僕がファンベースカンパニーに参画すると話したら、「あー、あのCRMのやつですよね」とコメントをいただくこともあり(苦笑)、まだファンベースがひとつのテクニック的なものだという誤解が広くあるのも現状です。

—具体的には、どのような支援をするのでしょうか。

佐藤:従来の広告ビジネスにありがちの受発注スタイルでは難しいかもしれませんね。向き合うべきは企業やブランド、商品のファンであり、彼らの感情です。それぞれの企業によってファンは当然変わってきますから、僕たちは企業ごとのファンをよく知り、傾聴しつつ、企業に伴走します。そうして企業もファンもハッピーになれるような絆づくりのお手伝いをしていくことになると思います。最後は企業がファンベース的に自走できる状態になるのがベストな形だと考えています。

津田:主に提供していくこととしては、①情緒的価値(ファンが愛するツボ)の発見と伸長②企業との伴走(ファンベース施策の実行)③ファンベース施策とマスキャンペーンの調和の3つがあります。

例えばファンミーティングを企画・運営するなど、ファン同士の会話にしっかり耳を傾け、本音を引き出す。そうすることで、自社サービスや製品のファンがどんな人たちなのか、情緒的価値がどこにあるのか、まず把握できるようにします。それをベースに、ファンとの継続的な関わり方や施策をデザインしていく。同時に、必要に応じて研修なども提供しながらクライアント企業の従業員も巻き込んでいきます。

僕たちは自走できるところまで一緒に伴走する。だからコンサルタントでもないんですよね。自ら動いてアウトプットも出したいし、とにかくファンベースをやりたい企業の役に立ちたいと考えています。

ファンが喜ぶ姿を見れば、従業員の熱量も高まる

—ファンベースの考え方は消費者以外のステークホルダーにも応用できるのでしょうか。

佐藤:そうですね。株主や社員など、社内外問わずあらゆるステークホルダーとの関わりにファンベースの考え方は生きると考えています。特に社員が自分の会社のファンになることは大切です。自分の会社に対する共感や愛着や信頼は、家族や友人、SNSなどを通じて必ず社外のお客さまに伝わって、ファンを増やしていくことにつながっていきます。

—二人は、今どんな話をしているのですか。

佐藤:僕たちは「日本中にファンベース的な考え方が広まると、きっともっと楽しい世の中になる!」という強い確信を抱いているので、よくそういう話をしています。例えば僕はAppleが好きだから、Macを使うたびに嬉しいなと思う。日常のすべての商品が、そんなふうに好きなものだらけだったら幸せじゃないかな、と。

津田:そうですね。愛着というか。使う人が幸せになるだけでなく、「好き!」だと思って購入してくださるお客さまが増えれば、企業で働く人たちも幸せにできるはず、という話をしていますよね。どの企業にも、絶対にファンのツボがあるはずなんです。そこを解き明かして伸ばしていけると、社会全体がハッピーになるはず。

佐藤:ファンミーティングを開催した時に、その様子を見て社員の方や幹部の方が涙を流して喜ぶ場面をたびたび目にしてきました。お客さまに好きだと思ってもらえる、喜んでもらえる、その場面を目にしたら、仕事に対するやりがいも深まりますよね。

いまCSRやCSV、SDGsなどの取り組みに関心が高まっていますが、そもそも企業が提供する商品・サービスは何らかの生活者課題や社会課題を解決しようとして開発されています。人の暮らしや社会を良くしようという目的のもとつくられているわけで、本来は企業の本業自体が社会貢献になっているはずです。そのことを企業が再認識し、それをファンが喜び、さらにそれを見た社員も喜ぶ、というようなサイクルがつくれたら最高ですね。そんな理想を掲げて日本にファンベースの考え方を広めていきたいと考えています。