日本の広告界を代表する210名のアドバイザーが参画をし、いま日本の広告界が議論するテーマを持ち寄り、企画される「Advertising Week Asia」。そのアドバイザリーボードのメンバーたちが今、日本の広告界が向き合う課題、そして希望についてリレー形式で語っていく。
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テクノロジーに対する熱狂は次のステージへ-マーケティングを変えるテクノロジーの未来
【執筆者】
エデルマン・ジャパン 代表取締役社長
ロス・ローブリー氏
40年にわたり日本に在住。複数の証券会社で上級管理職を経験した後、1995年にPR業界に転じ、ギャビン・アンダーソンのマネージング・ディレクターとして、M&Aや外資系企業の日本市場参入キャンペーンなどを手掛ける。プラップ・ジャパン専務取締役兼COOを経て、2010年より現職。外資系企業のみならず、国内企業のグローバル広報戦略の実現に向けたアドバイスを提供。
今、マーケティングに必要なのはデータと人格的アプローチ
当然のことながら、ターゲットとなる消費者を深く理解することはビジネスにおいて必須です。現在のデジタル社会において、マーケターは消費者理解につながるビッグデータを手に入れることができるようになりました。しかし、そのデータを有効活用するには、それなりの知見が必要であり「Advertising Week Asia 2019」でも様々なセッションで論じられるテーマです。
エデルマンでは昨年、人々の行動や意思決定プロセスに何が影響を与えるのかを理解するため、EPIC(Edelman Predictive Intelligence Centre)という予測技術を活用してコミュニケーションプランを策定するための機関を立ち上げました。このような機関を立ち上げた理由として、従来の概念での消費者理解では不十分であるとの問題意識が背景にあります。このコラムでは、その新たなアプローチについて触れながら、本稿のテーマである「テクノロジーとの向き合い方」について書いていきたいと思います。
ターゲットとなる消費者とは、一体誰なのか?
マーケティングやコミュニケーションに携わる人、特にマーケターやストラテジストであれば日々、自分たちのターゲットとなる消費者が一体誰なのかを考えていると思います。
マーケターは従来、消費者を特定する際に男性、女性、若年者、高齢者といった4つの区分を利用していました。しかし、たとえ同じ性別、年齢であっても、個人差があることは大いに考えられます。
例えば、私の友人に双子がいるのですが、同じ性別で、同じ環境で育ち、同じような身体的特徴を持っていて、名前のイニシャルまで同じであるにも関わらず、二人は全く違う嗜好性を持っています。一人は髪をピンクに染めて、眉毛も剃り、芸術的で反逆的な性格である一方、もう一人はキャリアウーマンで、飼っているヨークシャーテリアにもルイ・ヴィトンの犬用キャリーバッグを使っています。
皮肉なことに、人格において全く異なるこの2人は、デモグラフィックなデータを見る限り、は全く同じなのです。