広告・マスコミ業界向けの人材サービスを行うマスメディアンは8月16日、広告マスコミ業界に関心を持つ学生の中でも、文系の学生を対象にしたセミナー「AIは広告をどう変えるのか?」を開催した。電通のプランナー兼クリエーティブ・テクノロジストの大瀧篤氏と、日本ディープラーニング協会(JDLA)の有識者会員・工藤郁子氏が講師として登壇した。
AIに利用される深層学習(=ディープラーニング)と公共政策の関係について研究している工藤氏が、米国で顔認証AIが人種、性別上のマイノリティを誤認識する確率が高いと批判を受けた事例などを取り上げ、「エンジニアのみならず、法や倫理など人文・社会科学系の知識がフェアなアルゴリズムをつくるには必要だ」と指摘。
また、「AIが人間の雇用を奪うのでは」との不安に対しては、ひとつの職業すべてがAIに置き換わるというよりも、タスクの一部が自動化・効率化されていくと結論付けた研究結果を紹介し、「技術を上手に利用して仕事をしていくことが大切だ」と話した。
一方、大瀧氏は自身の仕事と絡めつつ、持論を展開。広告制作の場合、表現が薬事法などの関係法令に抵触していないかの確認作業が必要だといい、「法律や事例も定期的に更新されるのでキャッチアップが求められる。そうした領域はAIに任せ、僕らは企画など人間が価値を発揮する領域に集中することでアウトプットのクオリティを高めつつ、労働時間の圧縮を図りたい」と話す。
大瀧氏は、大学院でAIを研究した後、電通に入社。広告のみならず、テクノロジーと融合させた新たなスポーツの開発やMV制作、ライブ演出などのクリエーティブ業務を担当する。AIコピーライター「AICO」の開発に携わるほか、電通本社の各フロアに顔認識キットを導入したケースを紹介。会社全体の感情を絵文字で可視化した上、社員が元気だった際には活力が持続するパン、疲れていたら癒し成分入りのパンなどをリアルタイムで安くするシステムを制作し、社食で販売したという。
「AIに対して、怖い印象を持つ人もいるかもしれないが、人と人とのコミュニケーションを活性化する“あたたかい”AIの活用法を模索したい」と語った。
講演終了後には、学生に「夏」「車」をテーマに自由にキャッチコピーを書いてもらい、AICOのつくったものと比較する時間が設けられた。参加した学生からは、「大変面白かった」「AIへの恐怖や不安がなくなり、もっと知りたくなった」などの感想が寄せられたという。
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