消費税2%還元セールが魅力的に見える科学的な理由
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏の著作『ファスト&スロー』でも紹介されている、もっとも有名な行動経済学の知見のひとつに「損失回避(loss aversion)」があります。これは単純に言えば、「人は獲得することよりも、失うことに、より大きな苦痛を感じるため、失うことを避ける」というものです。具体的な例で言えば、それは「1000円もらうよりも、1000円を失うことを避ける」であり、このように必ずしも合理的とは言えない選択傾向が人間にはあるということです。
「なあんだ、そんなことか」と笑うかもしれませんが、これは購買を含む人の行動を大きく左右します。最近の例で言えば、10月に消費税が8%から10%に上がりましたが、この時に人々が積極的に反応したのは「消費税2%還元セール」で、消費税による追加の2%の値上げをしないというものです。
ですが、これは実質「2%OFFセール」と同様なのですが、後者のように単純に取り分が2%増える(つまり払うお金が2%減る、買う側にとっては2%得ること)よりも、前者の失った消費税の値上げ分2%が戻ってくる(つまりもともと2%多く失うはずだったものがゼロになる)ほうが、心情的には受け入れやすく感じるということです。
このように行動経済学(あるいは行動科学)とは、人が結果として選択する行動の動機となるような条件や理由を研究する科学ですが、これにより我々の多くが常に経済的価値を比較検討して、合理的な意思決定をしているわけではない、という例を示してくれます。
代表的な行動経済学者は同じくカーネマン氏と同様、ノーベル経済学賞を受賞して『Nudge(邦訳:実践 行動経済学)』を著したリチャード・セイラー氏や、『予想どおりに不合理』で有名なダン・アリエリー氏など多くの有名人がおり、一般的なマーケティングおよび広告関係者にも広く知られています。
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