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切り口探しが動画制作の第一歩 博報堂 小島翔太氏

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過去の受賞作品を見て、賞の特徴を分析する

次に、大切なのが過去の受賞作品の分析です。作品へのリスペクトはもちろん忘れませんが、このときは自分が王様のつもりで、偉そうに分析していきます。

昨年のグランプリは、渕上ファインズの課題で「結婚できないひと」でした。これは驚きのあるオチですよね。「結婚できない人」というタイトルと不倫をイメージさせる映像でミスリードするけれど、本当は女性同士の結婚を描いている。ストーリーが最後の「どんなかたちの幸せも、ドレスで応援することを誓います。」というコピーに、きれいに落ちています。映像の質も高いし、審査員がグランプリに選ぶのは納得がいきます。

渕上ファインズ(Dress the Life)「結婚できないひと」

準グランプリの1つ目は、ジョルダンの課題で「スマート乗換戦士 仮面ジョルダン」。動画のジャンルとしては、ヒーローもののパロディですね。この作品は、敵を追いかけるシーンで課題である乗換案内のアプリを使っている。それによって、ヒーローが敵よりアジトに先に到着してしまうという斬新なストーリー。次回予告や怪人を倒すときのエフェクト、アプリの見せ方などの細かいあるある、ギャグセンス、味のある映像と単純に飽きさせない仕上がりです。

ジョルダン「スマート乗換戦士 仮面ジョルダン」

グランプリ作品が「女性同士がウエディングドレスを着たシーン描いたらどうだろう」というアイデアスタートで最適な表現を模索したとすると、これは細かい表現を積み上げていったものです。ギャグやあるあるを丁寧に重ねると、ぱっと見の新しさに欠けても、良いものができる好例ですね。

もう1つの準グランプリは、森永製菓の課題で「※おいしく頂きました」。これは、非常にWeb動画らしい企画ですね。テレビでよく見る「※このあとスタッフがおいしく頂きました」というテロップを根っこに考えたアイデアです。「このあと食べる」を「この前に食べちゃう」に変換して、そのシーンをたくさん描いていく。

オチがエンゼルパイだけではなく、他のお菓子でもできてしまう点は、企画としては少し弱い印象です。しかし、食べ物について回る文章のテンプレで遊ぶことを発見した時点で、ある程度面白くなることが確定しています。

森永製菓 「※おいしく頂きました」

今回はこの3作品しか分析しませんが、他の作品も自分で分析してみると色々なものが見えてくると思います。

企画を考えるときは、小さな引っ掛かりをたくさん探す

クリエイターによって、企画の出し方はそれぞれだと思いますが、僕の場合はまず、企画の出発点になる小さな引っ掛かりを探しています。

本当に些細なもので良くて、その商品の特徴、いいところ、悪いところ、あるある―。思いついたことは全て、とにかく書いていきます。

不二家「ミルキーで思わず○○したくなる動画」

例えば今回の課題のひとつ、ミルキーの場合だと「とにかくおいしい!まじで止まらない」「ママの味(お母さんが全部食べちゃうとか?)」「包み紙のペコちゃん数えてたなあ」「歯にくっつく、歯がとれる」「なんでペコちゃんって舌出てるんだろう?」「疲れると甘いもの欲しくなるよね」など、本当にたわいもないことで構いません。

一旦NGを出さずにたくさん出してみる。その中で、育てるといい企画になりそうなものに目星をつけ、落とし込んでいきます。企画案ができたら、僕の場合は企画のパートナーに見てもらいます。その段階では、まだ本当に少しのテキストと、イメージ画像があるだけです。

「こんな切り口を考えているんだけれど、どうかな」というところから、話し合うようにしています。もちろんもっと案を詰めて持っていくという方法もあると思いますし、他にもたくさんの方法があると思います。僕の場合は、一度人に聞きながら、考えるようにしています。

ぜひみなさんも自分なりにたくさんの企画を考えてみてください。

パイロット「学生がドクターグリップで勉強したくなる動画」

当日のワークショップでは、パイロットの課題「学生がドクターグリップで勉強したくなる動画」に対して、参加者の皆さんにアイデアを出していただきました。

そして、それをどう広げていくと面白そうか、小島氏が参加者全員の全アイデアに対して、コメントをしてくださいました。

次ページ 「世の中のことを知ることが企画につながる」へ続く