わかったつもりにさせる説明と、わかるための説明は全く異なる
いま思うと、私は25年間わかったつもりでした。だからこそ私のブランドの翻訳は、現実社会の人にわかってもらうことができなかったのです。
コラムでもまわりくどくなって、読んでもらえないと困りますから、例えを使って、わかったつもりにしたいと思います。
例えば、あなたが高齢者から「スマートフォンってなんですか?」と説明を求められたらどう答えますか?
「持ち運びできる電話です」と答えるのが一番簡単かもしれません。他にも「携帯電話(ガラケー)が進化したもの」という説明方法もあります。ざっくり知りたいわけですから、高齢者へスマートフォン説明する場合はそれで十分です。これがわかったつもりの説明で、結果としてわかった(つもり)になります。
でも仮にあなたがスマートフォンの商品企画をする立場だとして、「スマートフォンは持ち運ぶ電話」と説明を鵜呑みにして、表面的な理解しかしていないなら、ちゃんとした企画などできるはずありません。
スマートフォンとはそもそも何なのかを、突き詰めて様々な角度から、順を追って学び、考えるという工程をきちんと経て、本当の意味でわかることが必要なのです。
ブランド論では第2回のコラムで書きましたが、(スーパースター)ブランドだけが差別化なのに、ブランドは差別化のことなのだと誤認していましたね。省略に気付かないのは、ブランドに省略があるという前提条件がわかっていない、つまりわかったつもりのレベルであった証拠。
わかったつもりにさせる説明と、わかるための説明は全く異なります。
ブランド論でわかったつもりレベルの実務者では、目的を翻訳できない。
翻訳ができないから問題が隠れて見えなくなっています。
日本企業のブランド実務者は孤立します
実は、このブランド論をそのまま目的にすることが、気づかぬうちに驚くべき弊害を生んでいます。ブランド実務者が、翻訳せずにブランド論を語ると、日本企業では周囲から総スカンを食って、実務者は孤立を深めることになってしまうのです。
孤立する理由は2つあるのですが、その理由については次回のコラムで解説していきます。
本コラムの5回目記事公開は、2020年3月5日(木)を予定しています。
「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論」バックナンバー
- 実務家はまず自社ブランドが消費者の「想起集合」に入ることを目指そう(2022/9/13)
- 『実務家ブランド論』であえて書かなかった「理論」を解説します(2022/9/09)
- 日本におけるブランドづくりは、いばらの道。だからこそ取り組む価値がある。(2020/9/03)
- そもそもブランドはどうやってできる? ブランド戦略におけるコミュニケーション施策のつくり方(2020/8/20)
- ブランド「戦略」不在 、「戦術」だけのブランドづくりの大罪(2020/8/06)
- SDGsで、ブランドなんかつくれません! 「ブランド論の幻想」に反論します。(2020/7/22)
- 「ブランドパーソナリティ」を偽ると、ブランドづくりは失敗します。(2020/7/09)
- もし、あなたが煎餅屋の店主だったら? 凡人ブランドがブランドプロミスをつくる方法(2020/6/25)
新着CM
-
マーケティング
手作り「スイカバーの素」 ダイソーで先行テスト販売…ロッテ
-
クリエイティブ
サントリー烏龍茶や月桂冠など定番6商品、ファミマカラー限定パッケージに
-
クリエイティブ
ズンズンペンギン、ヌンヌンアザラシ…海の動物が迫るマリンワールドの広告
-
AD
技術革新や価値観の変容から生まれる新たな機会を通じ、 クリエイターと共に、世の中...
-
クリエイティブ
新木優子がファッショナブルな間食を提案、湖池屋「ランチパイ」CMの裏側
-
広報
U-NEXT HOLDINGS、新社名にあわせたブランドコミュニケーション開始
-
クリエイティブ
「一言日記」のような言葉で心を捉えるルミネのコピー、約20年続く理由
-
特集
はじめに/あとがき/解説でざっくりわかる 宣伝会議のこの本、どんな本?
-
クリエイティブ
お米・人・製品への愛を表現、賀来健人をキャラクターに『亀田の柿の種』の新キャンペ...