コラム

「ダメ出し」から「ホメ出し」へ コピーライター思考の実践

発見とは、「ハッ」。ハッとしたら相手を褒めよう。

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「あ、ミュートになってます」
気付いたら、今日は3回口にしていました。
オンライン生活にシフトして早半年。
新しい生活様式が、
知らず知らずのうちに身についています。

ぼくにとっての細やかな楽しみは、
オンラインだからこその
「その人らしさ」を見つけることです。

いつもは渋い声の上司が、
娘さんが横にいると甘い声を出すんだなとか。
いつもはちょっと緊張感漂う取引先の方が、
自宅モードだとリラックスされていて、
人懐っこさが全開になるんだなとか。

実はこのとき、ぼくは相手の魅力を
「発見」しています。

つまり新事実をつかんでいます。

誰かを褒めるときにも、
この「発見」がものを言います。

惚れレンズで相手を見て
観察魔になることで
もたらされるのが「発見」なのです。

何をもって発見と呼ぶのか?
それは、あなたが「ハッ」としたときです。

ぼくはオンライン会議で、
上司や取引先の人の意外な一面に
「ハッ」としているのです。
これは相手の新しい価値に
出会ったときに鳴る胸の音です。

そして、その瞬間こそが、
ホメどきなのです。

ちなみに発見には、
大きく二種類あります。
「新発見」と「再発見」です。

新発見とは、
「ハッ!実はそんな一面あったんだ」
「ハッ!知らなかったけどそんな性格だったんだ」
という目新しい情報との遭遇です。

一方再発見には、
「ハッ!やっぱりいい人だな」
という再確認系と、
「ハッ!そういえばこういう魅力があったな」
という再認識系の発見があります。

で、ここからが今回のサビなのですが、
あなたがみつけた「新発見」と「再発見」を
相手がどう受け止めるかにも、
パターンがある
のです。

例えば、「ハッ!田中さんってマスクをしていない時の方がイケメン」
という新発見を、
田中さんに伝えたとしましょう。
「え、俺そうだったの!」という反応が
返ってきたら、それは田中さんにとっても新発見です。

でも、「さっきも言われた」と返ってきたら、
褒めるあなたにとって新発見でも
田中さんにとっては再発見です。

また、例えばあなたが
「ハッ!やっぱり田中さんって、人参を食べるときに小動物系で可愛いな」
と再発見をして、それを田中さんに伝えた場合。
「そう、たまに言われるんですよね」
と、ポリポリ人参を食べながら、
田中さんが返してきたら再発見です。

ところが面白いのはここからです。
「え、そうなの?」という反応が返ってくることもあるのです。
つまり、あなたにとってその魅力が自明だとしても、
本人が気づいていない場合が多々あります。
だからこそ、
「これ、相手は何回もホメられてるかな」
と思ったとしても、
再発見したことを相手に伝えるべきなのです。

まとめると、ホメ出しにおいては
4パターンの発見がある
ということです。

一番相手の印象に強く残るのは①です。
でも、逆にいうと、難易度が高い。
だから、まずは③を狙うことをおすすめします。
既に長年のつきあいがある相手
(家族でも恋人でも仕事仲間でも)
を惚れレンズを装着して観察する。
すると、必ず相手のいいところを
再発見できます。
「山下さんって、絶対人の悪口を言わないよね。
それって中々できることじゃないと思う」
発見したら、ストレートに伝えてください。
「たまに言われるんだよね。でもありがとう」
と言われた場合、これは③です。
あなたの再発見が、相手の再発見。
まずはここからで十分です!
ホメ出しとして成立しています。

③を狙っていれば、
たまに「自分で気づいてなかった、ありがとう」
と、棚からぼた餅のごとく、
④がもたらされることがあります。

ホメ出しに慣れていけば、
②へと進んでいき、
さらに慣れていくと、
①を量産することが可能になります。
このあたりの精度を上げる方法は、
また追い追いお話します。

ちなみに、すべてのコピーには、
何らかの発見が含まれています。

また、そこには、
発見の多様性があります。
新発見、再発見はもちろん、
大発見、小さい発見、本質的発見、普遍的発見、
細部の発見、環境的な発見、変な発見。
どれも立派な発見です。

コピーライターによる
発見の共有がキャッチコピーなのです。
例えばこちらのコピー。

くしゃみの飛距離は
7人がけの座席より
長い。
(KIRINプラズマ乳酸菌シリーズ)

くしゃみってそんなに飛ぶんだ!
とハッとすることで、
それを防いでくれるこの商品のことが
気になってきます。
はたまたこちら。

「寝る姿勢」の理想は、
「立ち姿勢」でした。
(マニフレックス)

え、そうなの!?とこれもハッとしますよね。
このあたりは「新発見」系です。

「細部の発見」は例えばこういうコピーがあります。

冬の餃子は、
白菜が、うまい。
(大阪王将)

小さくですが「ハッ」としますよね。
さらに、大発見系のコピーもいくつかご紹介します。

サラリーマンという仕事は
ありません。
(西武セゾングループ)

四十才は二度目のハタチ。
(伊勢丹)

なるほど!と思わず膝を打ってしまいます。
名作コピーには大発見が含まれている分、
心で鳴る「ハッ」も大きい。
その分、忘れられない発見となり、
自分の人生に刻まれます。

こんな感じで、コピーライターは、
商品や企業に惚れて、
執念深い観察をすることで、
必ず発見にたどり着くのです。

その発見の痕跡は、
だれかをホメ出しする際にも
大いに参考になるので、
ぼくは日頃コピー研究をしています。

これまでの連載で、
誰かにホメ出しするときには、
惚れレンズを装着し、
観察魔になることで、
発見がもたらされる。
という3つの話をしてきました。
すべてに通底しているのは「相手を信じる」ことです。
思わぬ発見が相手の中に隠れているに違いない!
そう心から信じることです。

新大陸はもう世界にはないけれど、
目の前の人の中にある
のです。
そう信じる冒険家にだけ、
「ハッ見」がもたらされます。

冒険といえば、最後に好きなコピーを一つだけ。
これぞ大発見、というコピーです。

保険は
冒険から
生まれた。
(東京海上日動)

さて、ここまではホメ出しの
基本的な姿勢の取り方をお話してきました。
次回からは、ホメ出しの表現法や、
より具体的な事例をご紹介していきます。
また来週!

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