10年で株価は13倍 Starbucksを復活させたハワード・シュルツの戦略を支えたパーパス・ドリブンな組織改革

2008年、Starbucksは1万人のストアーマネージャーを集めて、会社の新しいパーパスを紹介した。
In 2008, Starbucks convened 10,000 store managers to introduce the company’s new purpose.

【前回】「Apple、Nike、Starbucksにパーパス・ドリブンな変革を行う専門家3名が答える、経営者が向き合う4つの悩みと処方箋【後編】」はこちら

世界を襲うコロナショックを契機に、人々の生活や価値観、ビジネス慣習が大きく変わり、これまでの延長線の事業戦略では立ち行かなくなりつつあります。そこで注目されているのが、その企業の存在意義、つまりはパーパスを見つめ直すこと。自らの存在意義に立ち返れば、変えるべきところ、そして変るべきではないところも明確に見えてくるからです。
 
では、パーパス・ドリブンな組織変革とはいかにして実現すればよいのでしょうか。現在、多くの企業が直面しているであろうこの課題を解決するため、宣伝会議では、より実践的な企業変革のアプローチ方法を学べるオンライン特別講座『Becoming a purpose-driven organization』を9/25(金)に開催します。
 
特にパーパスを軸とした企業変革は、欧米の企業が進んでいるため、本講座ではStarbucks、IBM、Apple、Nike、Facebook、オバマ財団といった世界的に影響力のある企業や組織にパーパス・ドリブンな組織変革を行うSYPartners(米国・サンフランシスコ/ニューヨーク)の3名が講師として登壇。4回にわたる本連載では、講師を務める3名が講義内容を一部紹介する形で、パーパス・ドリブンな組織となるための本質を解説。
 
3回目となる本記事では、同社PrincipalのJarin Tabata氏がパーパス・ドリブンを実現するためのアプローチについて、3つの実践例を解説します。

※本記事の下部には、英語版も掲載しています。

企業のパーパスとは、端的にいえば「その企業が存在する理由」です。多くの企業が、パーパスのステートメントを持ってはいますが、パーパス・ドリブンといえるまでの企業は少ないのが実情です。

パーパス・ドリブンな状態とは、パーパスが自社のビジネス戦略のあらゆる要素を加速させ、組織に関わる全ての人がパーパスを感じることができている状態といえます。パーパスが北極星のような働きをし、経営者やリーダーが、あいまいな状況の中でも正しい決断をくだせるようになったり、従業員や部門・チームにまとまりをもたらされたりします。パーパス・ドリブンな状態の組織とは、大小を問わず、すべての意思決定のベースにパーパスがある組織のことです。

日本でも近年、パーパスが話題になっていると思いますが、企業のトランスフォーメーションを支援する私たちSYPartnersは、30年近くにわたり世界中の企業をパーパス・ドリブンな組織に変革するための取り組みを行ってきました。

米国に拠点を置くSYPartnersは、主に「Fortune500」(米国・フォーチュン誌が年に一度発表する、米国企業の総売上高上位500社のランキング)に名を連ねる企業のCEOたちとともに、パーパス・ドリブンなビジネスを創出し、永続的な成長と世界へのインパクトを与える仕事をしてきています。

ここからは私たちがパーパス・ドリブンへの変革において取り組んで来た3つのケーススタディを通して、パーパス・ドリブンなアプローチの一端を感じていただこうと思います。

Case1 :いかにして、WWはダイエット・プログラム提供企業からウェルネスを追求する企業へと変革したのか?

WWのボードメンバーであるオプラ・ウィンフリーと、SYPartnersの取締役会長スーザン・シューマン。
WW Board Member Oprah Winfrey with SYPartners Executive Chair Susan Schuman.

米国企業のWeight Watchers(以下WW)は、SYPartnersとパーパス・ドリブンな企業変革を始めようとしたとき、約1900億円の時価総額であり、優良企業と言われていました。50年間にわたり成長が続き、ダイエット・プログラムを提供するリーダー企業としてのポジションは確立されていました。しかし生活者の行動は、ただ痩せるだけではなく、健康やウェルネスを志向するように変化してきており、それが同社のコアビジネスの脅威になり始めていました。

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