「自明の理」×「暗黙の了解」ですごいエネルギーに
—お二人は、コピーライターとデザイナー・AD、それぞれの役割をどのようにお考えですか?
阿部:両者ともに「物事の見方を世界に提示する仕事」という点では共通していると思います。ライターの世界では、『書く「Writing」であり、光を当てる「Lighting」でもある』と言われますが、魅力的なポイントを見つけて光を当てる、という部分は同じだと考えています。
そのうえで、コピーライターは「どう読めるか?」に軸足を置き、ADやデザイナーは「どう見えるか?」に軸足を置いていると僕は捉えています。
言葉にすることは「自明の理」をつくることで、ビジュアルにすることは「暗黙の了解」をつくることです。この「自明の理」と「暗黙の了解」を掛け算していくとすごいエネルギーを放つ、という関係にあると思います。
小杉:クリエイティブという職種全体に言えるかもしれませんが、大きくは「翻訳家」だと思っています。それがコピーであり、ビジュアルであり、プランニングであろうが、世の中にどう伝えるか。
ただ、僕らがやっているのは翻訳サイトのような表面的な意味だけの翻訳ではなくて、クリエイター1人ひとりが深いところで理解して、何を考えて、その人自身の魅力で、どうアウトプットしていくか、という意味での翻訳「家」なのです。だから「役割」というよりは、その人がどういうことをコミュニケーションで考えているかが見えてくるわけで、それぞれの個性が際立ってこなければいけない職種なんだと思います。
壁にぶつかっても飛び越えられるミラクルな瞬間がある
—コピーライターとADはパートナーとして仕事をする機会が多いですが、それぞれの立場で、どんなことを頭に置いてきましたか?
阿部:以前、小杉さんと仕事をご一緒したときに、「翻訳家」としての姿を感じましたね。僕の中にも似た思いがあります。メッセージのつくる時に意識している方法が3つあって、1つめは「直訳」する。意図をそのままダイレクトに伝える方法ですね。2つめはその意図を解釈して「意訳」する。そして3つめは意図を踏まえつつ、飛び超える「超訳」です。
コピーライターとADが組むことで「超訳」できて、壁にぶつかっても、ジャンプして飛び越えられるようなミラクルな瞬間を目の当たりにすることが多々あるんですね。打合せをするときは、お互いに跳び箱でいう踏切台を探しあっているところがあるので、互いへの敬意を前提に、否定しあわずに、どうしたらより高く飛べるかを楽しみながら探す、ということを意識しています。
小杉:このテーマで僕が思い出すのは、博報堂にいたときにコピーライター/CDの谷山雅計さんと仕事をさせていただいたときのこと。たくさんのコピーをA4の紙に書かれ、大きなテーブル2個に並べられていました。その時谷山さんが書いたコピーが全部別々の“コミュニケーションの入り口”に見えたんです。
単に「てにをは」を変えたものが並んでいるのではなく、すべてのコピーのその先に“新しい視点”を感じられる絵がバンバン浮かんでくるんです。それこそが阿部さんの言う「ジャンプ」ですよね。だから僕は、コピーライターとデザイナー・ADは、ジャンプできるものをどっちが先に出せるか、良い意味で競い合うことを頭に置いています。
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