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2月3日のオリンピック臨時評議会での不適切な発言が問題となっている東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長。12日にも辞任を表明する見通しだ。
会見を前に、2月4日に行われた謝罪会見を振り返ってみよう。NYからライブ中継をチェックしていた筆者は、記者が待つ会場に入ってきた森会長の姿を見た瞬間に、「謝罪会見とは名ばかりだ」ということを察知した。何故ならそのプレゼンスには、例えポーズだとしても“謝罪する準備で臨んだ”という様子も意思も、何ひとつとしてみて取れなかったからだ。
ことの発端となったのは、2月3日に行われたオリンピック臨時評議会での森会長の発言。アメリカでもNew York Times紙などが早々に取り上げ報道した。
今回の一件についての真意やご本人の背景、そして人格などはさておき、問題となった発言に始まり、謝罪会見を開く際のあり方として終始「Inappropriate(不適切)」であったことは否めない。しかも入室早々に、我々にそう感じさせてしまうようでは、謝罪会見などやらない方がよかったのではとさえ思う。
昨今は、国民全員が謝罪会見に際して、対象者を必要以上に鵜の目鷹の目で見るようになっている。だからこそ、エグゼクティブのメディア対応時に瞬時に批判されてしまう重要かつ基本の「き」であるポイントに立ち戻って解説しよう。
赤×ストライプは謝る意識の完全なる欠如
皆さんお気づきだっただろうか、あの謝罪会見の場で森会長が赤のストライプ・タイを締めていたことを。会見会場に入室してきた森会長のその姿を見て、筆者が最初に思ったのは、「この人はこの場をパワーでねじ伏せるつもりなのかも?」だった。 多くの読者の方も「謝る気がなさそう」と感じたはずだ。顔の表情や話し方はもちろんだが、大きな原因のひとつが赤のストタイプ・タイだった。
あの種類のタイは、ネガティブな会見の時には最も避けるべきものだ。赤はパワーの色であり、今や誰もが知る通り「パワー・タイ」として用いられる。自信を示し、戦って勝利する激しい力を意味する。同時に、相手に強いストレスをかける色でもある。また、はっきりしたストライプはシャープで強い存在感を際立たせる。これらを掛け合わせたタイが、果たして謝罪会見の場にふさわしいだろうか。普通に考えたら答えは「No」だろう。謝る意識の完全なる欠如を示している。
もしかすると森氏はあのネクタイをわざと選び、身に付けてきたわけではないのかもしれない。擁護するわけではないが、いつもの通りにネクタイを選び、出かけてきただけだったとも考えられる。しかし、この場を何とか収めなくてはという意識を少しでも持っていたのであれば、人間は無意識でも赤という強烈な色を避ける感覚を持ち合わせているはずなのだが……。反対に、戦おう・抗おう・正当化しようと自分を奮い立たせていたとしたら、赤を選ぶ傾向がある。
実際、メディアに写真が出る森会長のネクタイやドレスシャツは、赤系のものが目につく。極論だが、ワードローブにあるネクタイが赤だらけだとしたら、他のものを選ぶ余地はなかったかもしれない。しかし、もしそうだとしたら、どれだけ常日頃からパワーを駆使しようとしているのだろうか?と思えてならない。
ただ、これは森会長ひとりの責任とは言い切れない。謝罪会見は、団体における責任ある立場を持った人が行うのだから、周囲には多くの関係者が存在する。その中の誰ひとりとして“タイをどうにかせねば”と気づかなかったとしたら由々しき問題だ。また、気づいていたとしてもそれが進言できない、言ってもご本人が聞かないとしたら、その組織内の構造図や組織文化にこそ大問題があり、今回の問題発言は氷山の一角だということを顕著に表していることになる。
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