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コラム

NYから解説!日本企業のグローバルブランディング

謝罪会見に「赤ネクタイ」はNG!森会長の「不適切」な装い

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正解は無地か控えめ小紋柄のネイビー・タイ

では、このような場ではどのようなタイを選ぶことが望ましいのか。反省とともにどういう意思を示したいのかにもよるが、信頼を取り戻すことをファーストプライオリティにする場合は、無地(遠目無地)か、控えめ小紋柄のネイビー・タイを選ぶと良いだろう。

筆者が企業のトップエグゼクティブや著名な政治家の方のコンサルティングをする際には必ずお伝えし、いつ来るか分からない危機対応時にすぐに使えるように備えている。

今回、入室の瞬間に「この人はこの場をパワーでねじ伏せるつもりなのかも?」と感じたのは、結果的に大当たりだった。読み上げた謝罪の文中には「謝罪をする」と言う言葉「発言を撤回する」と言う言葉は含まれていたが、それはあくまで文章を読んだだけであり、頭を下げることもなく、一切その気持ちは伝わってこなかった。

その証拠に、記者からの質問を受けているときに話をさえぎり、被せるように答えることも数回あった。記者に対する言葉も丁寧ではなく、早く会見を終わらせたいのかイラつく気持ちをぶつけているように見えた。

本来記者会見は、発表する側・取材する側ともに対等の立場で、冷静にやりとりができることが最も望ましい。たとえそれが謝罪会見であったとしても。ただ、謝罪会見の場合、問題の種類によっては突っ込んだ質問をされることもあり、起こした問題を真摯に認め、反省の姿勢と、それを踏まえた明確な改善策の提示をすることが必須だ。

今回の森会長の謝罪会見では、そのどれもが見受けられなかったうえに、終始言葉遣いが荒く高圧的だった。まさに赤のストライプ・タイから筆者が受けた印象そのままの行動だった。

「選ぶものはその人の意識や深層心理と結びついており、身に着けているものは真実を語っている」ということの裏付けがすべて取れた会見だった。そして、その場やその時の立場に適切かどうかもはっきり見て取れたのだった。

IOCも強い表現で「不適切」と表明

2月9日にIOCから今回の森氏の発言に関して「absolutely inappropriate(絶対的に不適切)」という非常に強い否定の内容を含んだ声明が出された。

「Inappropriate(不適切)」自体強い表現なのだが、さらに「Absolutely(完全に、まったく、絶対に)」という単語で強調されている。強い言葉に対してあえて強調表現を重ねることで、非常に強い意味が生まれ“比較余地のない”といった意味内容を示しているのだ。これがどれくらいのニュアンスであるかをお分かりいただけただろうか。

「Absolutely inappropriate」な発言をした人が、謝罪会見という場に「Absolutely inappropriate」なネクタイをしてきた。残念だが、森氏およびJOCは、よくない意味で言動が一致していることは確かだ。

これを教訓とするのであれば、謝罪会見の場できちんと謝罪しようという意思があるのであれば、とにかく赤いネクタイはやめよう。「謝罪します」と言ったとしても、すべてが嘘になり、人はただ許さないだけでなく、怒りさえ覚える。たかがネクタイ、されどネクタイだ。危機の時の赤は余計な炎、油のあるところに火を放つようなものであることを胸に留めておいて欲しい。