【前回コラム】「7時間目:「バスケで俺と勝負しろ。」ある日突然、現代美術家・椿昇氏が息子に挑んだ理由。」はこちら
イラスト:萩原ゆか
今回の「伝説の授業採集」は、みなさんを過去にお連れする。タイムスリップ型の遠足、である。
出発するにあたりまずは、遠足と言えば…の、しおりを配りたい。しかし、そこに書いてあるのは、旅程でも注意事項でもなく、次の問題である。遠足なのに抜き打ちテスト! まあとにかくやってみよう。やった後の方が、今回の旅の意味は増す。
即答ですよ、即答。答えました?
この問題は今回の遠足の行き先で、実際に過去出題されたものである。場所は鹿児島。当時はまだ薩摩と言った。時は、江戸時代後期である。
歴史なんて、若い頃は正直好きじゃなかった。それがいつからか、いつも歴史に注目するようになり、いま好きかと言われれば好きと答えるだろう。
それは別に歳を取ったからではない。歴史がインスピレーションの宝庫だと気づいたからだ。
西海岸のテクノロジーの情報や海外のデザイン賞の事例などと等価、いやむしろ、みんなが忘れ去りないがしろにしている過去の情報の方が企画に活きると実感したからだ。
そんな風に様々なヒントを過去から、特に幕末~明治維新から探っていたある時。薩摩藩のとある町の存在を知った。
西郷さんの生誕地。そこは鹿児島の加治屋町という町らしい。大久保利通はというと、なんと彼も加治屋町出身らしい。大山巌は…、えっ、加治屋町?!東郷平八郎はまさか…、加治屋町出身?!?!
この加治屋町って何?
というわけで、この遠足の最初の行き先は、加治屋町である。新幹線を降り、鹿児島中央駅から歩くこと15分足らずで、その謎の町、加治屋町に到着する。
加治屋町の看板。上記の4人だけでなく、西郷従道、村田新八など、もっとたくさんの偉人がこの町から輩出されている。ちなみに行ったのはコロナのずっと前、2017年です。
東郷平八郎さんの家(左)と大山巌さんの家(右)は、実際徒歩2分。西郷さんや大久保さんの家を含めても、全ての生誕地が半径数百メートル以内に収まる。
さて。なぜ同じ町内からこんなにもスーパースターが乱立したのか?
行けば謎はすぐに解ける。鹿児島の歴史の資料館には全てそれがらみのコーナーがあるし、すでに上の看板にも書いてある。
答えは、教育にあった。薩摩藩特有の「郷中教育(ごじゅうきょういく)」である。
郷中とは、地域の自治組織。今で言う町内会みたいなものとのこと。薩摩の教育は主にその郷中単位で行われていたらしく、郷中の先輩たちがその地域の後輩達を文武両道で鍛錬、教育した。
倉成英俊 (Creative Project Base 代表取締役/ アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所所長)
倉成英俊 (Creative Project Base 代表取締役/ アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所所長)
2000年電通入社、クリエーティブ局配属後、多数の広告を制作。2005年に電通のCSR活動「広告小学校」設立に関わった頃から教育に携わり、数々の学校で講師を務めながら好奇心と発想力を育む「変な宿題」を構想する。2014年、電通社員の“B面”を生かしたオルタナティブアプローチを行う社内組織「電通Bチーム」を設立。2015年に教育事業として「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」を10人の社員と開始。以後、独自プログラムで100以上の授業や企業研修を実施。2020年「変な宿題」がグッドデザイン賞、肥前の藩校を復活させた「弘道館2」がキッズデザイン賞を受賞。
倉成英俊 (Creative Project Base 代表取締役/ アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所所長)
2000年電通入社、クリエーティブ局配属後、多数の広告を制作。2005年に電通のCSR活動「広告小学校」設立に関わった頃から教育に携わり、数々の学校で講師を務めながら好奇心と発想力を育む「変な宿題」を構想する。2014年、電通社員の“B面”を生かしたオルタナティブアプローチを行う社内組織「電通Bチーム」を設立。2015年に教育事業として「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」を10人の社員と開始。以後、独自プログラムで100以上の授業や企業研修を実施。2020年「変な宿題」がグッドデザイン賞、肥前の藩校を復活させた「弘道館2」がキッズデザイン賞を受賞。
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