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「見えづらい」を「見える」に変えるプロジェクト — QDレーザ「With My Eyes」

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「困っている」は勘違い?

「With My Eyes」は一言で言うと“見えづらい”を“見える”に変えるプロジェクトだ。

AOI Pro.やメガネブランド「Zoff」を展開するインターメスティック、JALグループの国内線航空会社 ジェイエアなど6社が賛同し、20年12月21日に第一弾の取り組みが発表された。網膜投影技術を用いたカメラ型デバイス「RETISSA SUPER CAPTURE」を制作し、ロービジョン者が自らの目で写真撮影に挑む、という内容だ。

12月21日に公開したWeb 動画「With MyEyes ドキュメントムービー」。

少しでも多くのロービジョン者の関心を得るため、「網膜色素変性症」などさまざまな症状のある男女5人に参加してもらい、撮影したい対象を事前にヒアリング。小旅行の中で撮影を実施し、その様子をプロジェクトムービーとして公開したほか、その際に撮影した写真の展覧会をZoff 原宿店で21年1月下旬まで開催した。

企画の経緯を電通のクリエイティブディレクター 秋山貴都さんは、「当事者の方々にヒアリングをする中でハッと気づかされたのは、必ずしも私たちが勝手に想像するほど困ってはいない、という事実。物心がついた頃から視力が弱い方も多く、当たり前ですが、皆さん自立されています。

デバイスを通じて“マイナスをゼロにする”という発想から、“生活の+ αとなる価値を提供する”方向に軌道修正し、今回の企画ができました」と話す。「With My Eyes」というプロジェクト名も、同じくヒアリングの中での「この目と生きていく」という言葉を元に、秋山さんが名付けた。

当事者の言葉をありのまま伝えた動画

動画制作においては、「当事者がどう考えているかを、僕らが決めつけることは絶対にしたくなかった」と秋山さん。「僕らが解釈をしてそれっぽい言葉で締めるとかではなく、とにかく生の声をつなげていく。どう感じるかは見た方にゆだねる、というスタンスの動画にしたいと思っていました」。

AOI Pro.のプロデューサー 村田淳一さんは「秋山さんからお話をいただいてすぐに、CONNECTIONの柿本ケンサクさんに演出をお願いしようと思いつきました。コロナ下で世の中に役立つことをしたい、と以前からよく話していたんです」。

インタビューも制約を設けずに進められた。良い意味での“予想外”となったのは、当事者の生の言葉の数々だ。たとえば出演者の1人、アクサ生命/セラピストの秋葉茂さんは「人と話す時って顔見えてないから、やっぱり顔見て話せるのって嬉しいですよね。僕が声かけて、こういう表情してくれてるんだってわかるから、すごく安心感があります」と語っている。

「ただただ、出演してくださった方々の話が素晴らしかった」と村田さん。同じくAOI Pro.のプロデューサー 穴久保亮さんも「当初はここまでインタビューのシーンを使う予定は無かったんです。5、6分の動画を想定していましたが、柿本さんから届いた時点で既に約12分あって(笑)。ありのままの言葉が、動画の質を底上げしたのだと思います」と話す。

また動画の中で特に工夫した点については、「“見えづらい”をどう表現するか、です。ロービジョン者の方の見え方は、中心部だけが見えなかったり、内側だけ、上部だけなど本当にさまざま。実際にどう見えているかはご本人にしかわかりませんが、完成物では、ヒアリング内容をもとにピントをぼかしたり、見えない部分を暗くしたりすることでそれを表現しようと試みています」と、村田さん。

「弱視教育のための書籍『視力0.06の世界』(著:小林一弘/ジアース教育新社)には、“生活の中で90~95%は自立している。残りの5%のサポートが欲しいのだ”と書かれていました。それは人の顔をみること、遠くの景色をみること、小さな文字を読むことだそうです。

これらを実現できるのが『RETISSA』シリーズ。ロービジョン者の方々が必要とする機能が、今回の動画に落とし込まれています」(菅原さん)。

「With My Eyes」プロジェクトムービー、ロービジョン者による写真撮影(ロングバージョン)

 

次ページ 「プロジェクトが導く可能性」へ続く