2部「実演!体験!デジノグラフィ」
続けて2部は、「実演!体験!デジノグラフィ」と題し、手軽に利用できるデータ分析ツールを使った、データ分析のデモンストレーションが行われた。
最初に酒井さんが紹介したのは、文章を入力すると、どのような傾向があるのかを解析することができる「テキストマイニング」を行える無料ツールだ。テーマは「男と女はどっちがバカか」。
「これは私が2017年に初めて手がけたデジノグラフィ研究の事例です。『バカな男』という言葉を含む96曲、『バカな女』を含む109曲。全ての歌詞を自分でコピペして、テキストマイニングツールに入れてみたんです。
その結果、明確な答えが出ました。男女ともに、歌の題材とされているのは圧倒的に色恋絡みだったのですが、『バカな女』は『バカな男』に比べ、『お酒』『飲む』など、お酒まわりのワードが多く、また、『待つ』や『知る』などの動詞で語られることが多いとわかりました。一方で、『バカな男』は、『悲しい』や『つらい』といった形容詞や『人生』のような抽象的な名詞で自分を語りがちであることがわかりました。つまり、失恋して一人でくよくよしたり、悦に入るのが『バカな男』。京都から博多まで男を追いかける阿久悠さん作詞の曲のように、無駄な行動力を発揮するのが『バカな女』というわけです」
続けて、テキストマイニングにはこんな使い方もある、と紹介されたのが、社内の職種や部署間での、興味領域や使われる言葉の違いの分析だ。
「例えば、クリエイティブと営業それぞれの人のチャットルームでの会話を分析したとしましょう。すると、『コロナ』などの社会テーマはクリエイティブ、営業両方のチャットで言及されているものの、クリエイティブの人の方が『いや』『うわー』『とほほ』など感情ワードが多い、というような傾向に気づくことがあります。
一方で、営業の人のチャットには『ソーシャルキャピタル』などの難しい言葉やソリューションに関する言葉が多かったり。そんな風に、マーケティング活用だけじゃなく、会社内で部署ごとにどういう話題の壁があるか、分析してみることもできるんです」
また、検索データ分析ツールを使って、昨年から関心の高まっている「テレワーク」をめぐる検索の傾向が紹介された。
「テレワーク自体は全体としては男性54%、女性46%と、男性のほうが多く検索しています。年齢は30~40代が多く、エリアでは圧倒的に東京で、次いで大阪、名古屋、北海道、福岡が多いですね。検索の推移としては、去年の4月に大きなヤマがあり、現在は去年の7月と同じぐらいのボリュームになっていることがわかります。さらに、『テレワーク』と検索した人は他にどんなことを検索したか見てみると、『助成金』『Web会議』『シンクライアント端末』と、テレワークに必要なツールや補助について深く検索していることがわかります。
このような分析ツール以外に、Webサイトから自動でデータを収集するスクレイピングという技術もあります。かつてはプログラミングをやる人にしか使えませんでしたが、今なら直観的な操作でスクレイピングを行ってくれる無料サイトがあります。スクレイピングについては、一昨年に著作権法が改正され、情報解析や研究用途での活用が、従来よりやりやすくなっているという背景もありますね。そういう意味でも、世の中のデータを簡単に利用できる環境が整いつつあるということができます」
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