メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

今、アドバタイザーが目を向けるべき課題 — ネット広告市場の健全な発展における役割を考える

share

2021年3月1日、日本アドバタイザーズ協会(以下、JAA)、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会は共同で「一般社団法人 デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)」を設立。JICDAQはデジタル広告の品質を第三者的に認証する機構で、4月から本格的に活動を開始しました。アドバタイザーは今、JICDAQの設立に何を期待するのか。そして、ネット広告市場の健全な成長のために現状、課題となっていることは何なのか。
JAAデジタルメディア委員会の発足から携わり、JICDAQにも構想段階から関わってきた小出誠氏、JAAで小出氏とともに機構の設立を議論してきた岡村達憲氏、ネット広告の問題に対応し、自社でアドベリツールも導入して取り組みを進めてきた片山義丈氏に話を聞く。

(本記事は、4月1日発売の月刊『宣伝会議』2021年5月号の記事を一部抜粋して掲載したものです。『宣伝会議』誌面にて全4ページの記事を掲載しています)。

ユニ・チャーム
DX推進本部
デジタルマーケティング統括部 部長
岡村達憲氏

ダイキン工業
総務部 広告宣伝グループ長 部長
片山義丈氏

日本アドバタイザーズ協会
常務理事
小出誠氏

急成長するデジタル広告は過大評価されすぎている!?

4月からJICDAQが本格的に活動を開始します。本機構の設立に先立ち、JAAでは2019年11月に「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言」を発表。この宣言では①アドフラウドへの断固たる対応、②厳格なブランドセーフティの担保、③高いビューアビリティの確保、④第三者によるメディアの検証と測定の推奨、⑤サプライチェーンの透明化、⑥ウォールドガーデンへの対応、⑦データの透明性の向上、⑧ユーザーエクスペリエンスの向上が謳われていました。

電通発表の2020年「日本の広告費」では、インターネット広告費は前年比105.9%の2兆2290億円でテレビ・新聞・雑誌・ラジオを含むマスコミ4媒体広告費(2兆2536億円)と、並ぶまでに成長。JAA会員社のみならず、デジタル広告活用が必須となっていく現代において、取引の不透明性に関わる諸問題は解決すべきテーマです。まずは現状のデジタル広告における課題として感じていることをお聞かせください。

小出:デジタル広告はマス広告と比べてターゲティングの精度が高い、効果がわかりやすいなど、良い面ばかりが強調されすぎてきたのではないかと感じます。背後にある問題やリスクの部分について、広告主に対してあまり説明がなされてこなかったのではないかと懸念を抱いています。

そのため広告主は、マスメディアに出稿するのと同じ感覚でデジタル広告に出稿をしてしまった。それが2017年頃から、P&Gやユニリーバなどのグローバル企業のCMOがデジタル広告の取引の不透明性について指摘をするようになり、日本の広告主の間でも課題が認識されるようになってきました。

岡村:当社の場合、若年層を対象としたブランドなどターゲットが明確な商材が多いため、ここ数年、広告投資のデジタルシフトを進めてきました。2016年頃から、投資額を増やしていて、4年前と比べるとその投資額は数倍に増えていると思います。それだけにアドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフティの問題に対して悶々とした思いを抱えていました。ブロックリストをつくるなど、広告主としてできうる対応はてきましたが、それだけでは決して十分とは言えません。やはり広告会社、メディアの方たちに広告主が安心して購入できる体制を整えてほしいと考えますし、そこでJICDAQにはとても期待をしています。

—JICDAQの発足はJAAの加盟社だけでなく、すべての広告主に関係する話題だと考えます。片山さんは、現状のデジタル広告の問題についてどのような考えをお持ちですか。

片山:小出さんが指摘されたように、マス広告を出稿する際には「どんな枠に自社の広告が出たかを検証できない」ということはありませんでした。そこで、同じような感覚でデジタル広告を使ってきてしまった。しかしデジタル広告の場合には、希望するインプレッション数に到達するためには、予約型だけでなくアドネットワークを介した配信も活用する必要がある。広告費のデジタルシフトが急速に進んだために、広告主も広告業も十分にリスクを理解しないまま使い続けているのが現状ではないでしょうか。それゆえ、デジタル広告の問題は顕在化しているようで、まだ一部の広告主にしか認知されていないことも課題に考えています。当社も宣伝部が独立してあるわけではなく、総務部の中に属している形。すべての広告主企業で広告部門が専門特化しているわけではないので、問題自体がどこまで理解されているかも課題に感じます。

※本記事は、4月1日発売の月刊『宣伝会議』2021年5月号掲載の記事を一部抜粋して掲載したものです。記事の続きは、月刊『宣伝会議』2021年5月号でご覧ください。

【解説】JICDAQとは何か?

機構名は一般社団法人 デジタル広告品質認証機構(略称:JICDAQ)

日本でも、急拡大したデジタル広告において、アドフラウドやブランドセーフティなど様々な品質課題が提起され、その影響は多岐にわたり増加し続けてきた。そこで日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会の広告関係3団体では、これらの課題を解決すべく、会員各社との議論や検討、行政機関とのやり取り、海外事例の問い合わせや研究など、デジタル広告の品質課題解決に向けた活動を推進し、品質認証のための第三者機関の設立に至った。

「一般社団法人デジタル広告品質認証機構(Japan Joint Industry Committee For Digital Advertising Quality & Qualify、略称:JICDAQ)」は、3団体が中心となり、デジタル広告市場が健全に発展し、企業にとっても社会にとっても有益なものになることを目指して立ち上げる認証機構であり、「アドフラウドを含む無効配信の除外」と「広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保」に関わる業務プロセスの監査基準を制定。それに沿った業務を適切に行っている事業者を認証し社名を公開する。また理念に賛同するアドバタイザーの社名も公開し、協働して広告品質の向上を目指す。

ユニ・チャーム
DX推進本部
デジタルマーケティング統括部 部長
岡村達憲氏

1991年 ユニ・チャーム入社、ベビー用や大人用の紙オムツのブランドマネージャーを歴任。2007年よりデジタルマーケティングに従事、約4年間の中国でのデジタルマーケティング、EC事業推進を経て現職。

 

ダイキン工業
総務部 広告宣伝グループ長 部長
片山義丈氏

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。

 

日本アドバタイザーズ協会
常務理事
小出誠氏

1984年資生堂入社。2018年1月、資生堂ジャパン・メディア統括部長に就任。現在は同社、メディア戦略部エグゼクティブマネージャー。2016年11月、日本アドバタイザーズ協会 デジタルメディア委員長に就任、現在は日本アドバタイザーズ協会の常務理事を務める。