データとクリエイティビティはせめぎ合いながら進化する — 安藤元博×嶋浩一郎×堀宏史座談会

あらゆる産業で「デジタル化」や「DX」の必要性が叫ばれている。それでは広告という産業のDXは、どのように進んでいくのだろうか。
マーケティングの調査手法にクリエイティブ、さらには広告ビジネスそのもののデジタル化はどう進んでいくのか。その答えを体現する存在が、博報堂生活総合研究所によるデータ分析の新手法「デジノグラフィ」と、博報堂DYグループが推進する広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS」だ。新刊『デジノグラフィ』の発売を記念し、著者のひとりである博報堂 博報堂生活総合研究所 所長代理の堀宏史氏と博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス推進センター長の安藤元博氏、さらに博報堂ケトル 取締役の嶋浩一郎氏が加わり、「データとクリエイティビティ」の今後を語った。

鳥の目、虫の目に続く“第3の目” 「デジノグラフィ」とは?

—博報堂生活総合研究所が進める「デジノグラフィ」について教えてください。

:博報堂生活総合研究所(以下 生活総研)は、博報堂の「生活者発想」を具現化する組織として1981年に設立されました。人間を単なる消費者ではなく「生活する主体」として捉え、その意識と行動を研究しています。

「鳥の目」「虫の目」を標榜し、日本人の意識の変化を30年近い長期時系列調査で追いかける一方、まさに「虫の目」をもって街中に出て生活者をありのままに見て、その中に何が見えるのかの観察もしてきました。

今回の「デジノグラフィ」は「鳥の目」「虫の目」に続く「第3の目」と言えるもの。検索履歴や位置情報、SNS投稿、自撮り画像、購買履歴など私たちの身近なデータを徹底観察して様々な視点を掛け合わせ、隠れた本音や欲求(インサイト)を明らかにしようとするものです。

安藤

:生活総研は、デジタル化が進む以前から、人の行動をデータとして可視化することに取り組んできましたよね。例えば80年代には「渋谷の駅を降りた人がどのように動くのか」をリアルに追跡して地図の上に書き起こし、渋谷の街の生態を浮き彫りにする調査をしていた記憶があります。それが今、デジタル化したわけですね。

:まさにそうです。以前「関西の女性は、アニマル柄のファッションを着ている」という俗説を、大阪と東京の街中でタウンウォッチングして調べたこともありました。結果は意外と大阪と東京との差はありませんでした。当時はアナログで実際に町に調査しましたが、今ならたぶん…。

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